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【歴史の交差点】東京大学教授・山内昌之 新政権は国益の定義を

アデナウアーは、いやしくも歴史家なら歴史がどの方向に進むのかを知るべきではないかというのだ。

歴史家はアデナウアーが期待したように、予想される展開を指し示し、時によっては「警告を発する」必要があるのかもしれない(ティモシー・アッシュ『ヨーロッパに架ける橋』)。

いずれにせよ、鳩山由紀夫首相と岡田克也外相による民主党外交には、歴史の新たな進路を切り開きたいと願うあまり、外交で重視すべき“国益とは何か”という観点の確認がともすれば希薄な印象を受ける。

新政権は、まず外交と安保をめぐる日本の国益をきちんと整理したほうがよい。

鳩山政権の外交は、日米同盟と日中韓東アジア共同体を交差させながら、21世紀日本の進路を構築しようとしている。

 確かに、在留米軍再編や核持ち込みの問題などで日米関係には、国益の再定義に向けた動きが見られる。しかし、中国に対しては、日本の国益を正しく定義する動きはまだ出ていない。

 日本の領土や領海を侵す不法行為に抗議もせずに東アジア共同体の理想を語っても、中国は“善意”の枠組みづくりを利用しながら既成事実を積み重ねるだけにすぎない。東アジア共同体構想を議論する前になすべきは、日中の2国間ベースで目下の懸案について相互の国益をすり合わせ、必要なら妥協を模索しながら、解決する覚悟や勇気を中国に抱かせる努力にほかならない。

新政権がこの切所にほとんど触れず、外交の相互主義パリティを無視しがちなのは、守るべき国益の内容で十分に合意ができていないからだ。

2人に期待されるのは、アデナウアーが評されたように「したたかな理想主義者」になることだろう。

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