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米国流の「理」、日本流の「情」―コマツ 坂根正弘

スピーチなど人を動かすための文章には、絶対に正確に伝えなければいけないところ、「肝心かなめ」の言い回しが存在する。そこだけは、練りに練って推敲を繰り返し、文章を作り上げなければならない。とりわけ外国語であれば、ネーティブの部下に添削してもらうといった工夫をし、万全を期す配慮も必要だ。

話の骨格をまずは個条書きの文章でしたためていく。英語でスピーチするときも、この段階では必ず日本語を使う。母国語のほうが思考をまとめやすいからだ。

だが、スピーチにはどうしてもこれだけは伝えたい、わかってほしいと思う「キモ」の部分がある。ここのところを特別に強調するには、どうすればいいか。私はやはり、おざなりな直訳調の言葉ではなく、相手の胸の奥に届くような英語表現を使うことが大切だと考えた。

「みなさんにわかってほしいのは、俺たちはみな同じボートに乗っているということだ。コマツのほかの工場はたしかに閉鎖やレイオフを行ったが、あれはもともと合弁相手のものだ。組合があるし、レイオフのルールもきちんとしている。だが、この工場は違う。だから、みんなで苦楽を分かち合うというコマツの流儀を持ち込んだのだ」

もっとも、「雇用に手をつけない」という方針を確立したために、余剰人員リスクを招いてしまったのも事実である。いざというとき人を切れない足かせがあるため、好況のときもテネシー工場では積極的な設備投資に踏み出せないというジレンマが生じたのだ。

日本流を持ち込んだことがほんとうに地域経済のためによかったのか、いま私には若干の悔いが残っている。