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日本経済のトレンドとサイクル

本書の最大のポイントは、経済を見るとき長期的なトレンドと短期的なサイクルを区別することだ。

90年代以前の安定成長期にはいわゆるGrowth Recessionと呼ばれ、成長が足踏みする時期が不況だが、

90年代はちょうど成長の頭を押さえられ、成長率が低下した形となっている。

この「経済の底が抜けた」状態を是正しないで、一時的な景気刺激を繰り返しても、「洗面器から這いずり出ようとするカニのように、元に滑り落ちてしまう」。著者は短期的な(財政・金融の)ケインズ政策の効果は否定しないが、その有効性はトレンドの強さに依存しているという。

もう一つ、見逃されがちなのがグローバルな資本市場の影響だ。図のように世界の実質金利は、均等化する傾向を強めている。資本移動が大きくなって金利裁定がはたらくようになり、為替トレーダーはみんな実質金利を見て取引をしている。少しでも実質金利の高い国の通貨は買われて為替レートが上がり、経常収支が悪化してデフレ傾向になる。

日本のデフレの大きな原因は、名目金利がこの20年間、一貫してアメリカより低いことにある。資本収益率が低いために企業が貯蓄主体になり、金利が低いことが円高とデフレの根本原因なのだ。こうしたデータをもとに、著者は「企業が資金余剰主体になったことから、旧来の金融政策の有効性が低下し、新しい[非伝統的な]金融政策もマクロ経済政策としては有効ではない」と結論する。