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『玉くしげ』

玉くしげ

さやうの悪き者も、なきことあたはざるは、神代よりのことわりなり、人のみならず万の物も、よき物ばかりはそろひがたくて、中にはあしきも必まじるものなるが、その甚悪きをば、棄ることもあり、また直しもすることなれば、人もさやうの悪き者をば、教へ直すも又道にして、これかの橘の小門の御禊の道理なり、然れども大かた神は、物事大やうに、ゆるさるゝ事は、大抵はゆるして、世人のゆるやかに打とけて楽むを、よろこばせたまふことなれば、さのみ悪くもあらざる者までを、なほきびしくをしふべきことにはあらず、さやうに人の身のおこなひを、あまり瑣細にたゞして、窮屈にするは、  皇神たちの御心にかなはぬこと故、おほく其益はなくして、返て人の心褊狭しくこざかしくなりて、おほくは悪くのみなることなり