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【正論】東京工業大学名誉教授・芳賀綏 角界は「力士人格」みがく努力を

肝心の教える適任者が出ぬままに

 かつては大関が最高位で、横綱は実力と品格を兼ね備えた大関に贈る「称号」(尊称)だった。

 横綱は昔の通り称号にすべし(横綱で非行があれば剥奪(はくだつ)も可)というのが筆者の持論である。

 あらためて思うのは、力士にも「上質の人脈」が大事ということだ。“角聖”と呼ばれた明治の大横綱常陸山は広く各界名士との交流があった。双葉山は思想家、安岡正篤や六代目尾上菊五郎らの師友に恵まれ、さらに日蓮宗の望月日謙上人(石橋湛山元首相の育ての親)の知遇も得た。「心が体を包む」とまで言われた品格もむべなるかなと思わせる。


 さらに双葉山を追った天才横綱照国を育成した“相撲の神様”幡瀬川は、文豪志賀直哉をはじめ各界高峰と交遊し、美術鑑賞眼の高さも知られた。

 学ぶ相手の「格」が力士の人間形成に影響する。とすれば、今の相撲界にも精神的格調や教養の重みが求められるが、もはやできない相談か。しかし、白鵬はいま双葉山の言行録に学び、ビデオで土俵入りの所作まで見習っている。その「心の人脈」が精神的大成をもたらし、自制の徳を備えた国技の代表者になり得るだろう。

 因習の壁に挑んで当選した貴乃花理事は、外国人力士養成法の工夫など改革の提唱を始めた。焦らず、角界に新風を着実に注入してほしい。伝統文化を守るためにも、協会にはむしろ、その守旧姿勢を改める責務がある。あわせて角界再生のための健全な世論の波にも期待する。