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ドラッカー学会代表  上田惇生インタビュー 「普通の人が最高の仕事をするにはどうしたらよいのか。ドラッカーの関心は、その点にあった。一言に凝縮すれば、“世のため人のため”ということ」 | 『週刊ダイヤモンド』特別レポート | ダイヤモンド・オンライン

 35歳の時ですね。当時、私は経団連事務局で植村甲午郎会長の秘書をしていました。


 経済の勉強には経済書や経営書の翻訳がよいと先輩に言われて、それまでC・N・パーキンソンやE・ボーゲルの翻訳をしていましたが、ドラッカーのものは『現代の経営』を読んでいたぐらいでした。


 そこへ『マネジメント』の翻訳チームに入らないかと声がかかったことが、その後の長い関わりのキッカケとなりました。


 ドラッカーの本の中で、最もブ厚い『マネジメント』は、原著が800ページで、それを訳した日本語版は1300ページの上下二冊になりました。しかも、集団による翻訳作業は難しいものです(※現在は、上中下の三分冊になっています)。


 そこで私は、ドラッカーに手紙を書きました。「だいたい、あの本は厚過ぎる。重複も多い。中身をさほど変えずに薄くできる。まず、英語で薄くしたものを見せるので、私に翻訳させてほしい」と志願しました(笑)。

 はい。それはもう、わからないことは、なんでもかんでも本人に聞きました。その結果、できたのが『抄訳マネジメント』(簡略版)という本で、現在の『マネジメント【エッセンシャル版】』の元になりました。

 ドラッカーの魅力は、彼の本を読んだ人が「まるで自分のために書いてくれているようだ」と言うくらいに、“それぞれのドラッカー”が見つかることに尽きるでしょう。

 ドラッカーの著作は、「経営学の本」に分類されることが多いですが、一般的なビジネス書と異なり、「こうすれば儲かる」というような具体的なハウツーは書かれていません。彼の関心の中心は、「産業社会は人を幸せにするか?」「普通の人が最高の仕事をするにはどうしたらよいのか?」という点にありました。すべて、そこから出発していると言っても過言ではありません。

 ドラッカーは、最初は政治学者としてスタートしました。その後、米国に渡ってから、マネジメントの世界に入ります。彼は、現代の社会で、ますます重要性を増している“組織”を研究の対象にしました。そして、企業などの組織が上手に運営されれば、経済的に潤うだけでなく、人びとは生き生きと働けるようになり、人生を豊かなものにできると考えたのです。

─そのような観点から、ドラッカーは企業や社会を論じてきたので、“経営学”というより、“経営道”と言えるかもしれませんね?


 そうそう、だから日本人がドラッカーの本を読むと、すんなりと入って行けるのです。初めて読んだ人でも、「この人は何を当たり前のことを言っているのだ?」と感じるほどに、東洋思想からの影響が見受けられます。

─しかしながら、それだけ日本人に親しみやすく、ドラッカーが「組織とマネジメントに関する私の研究を助けてくれた」と言った日本でも、彼の経営思想のいくつかは間違ったままで定着してしまったというケースがあります。


 そのとおり。


 たとえば、「目標管理」(MBO)があります。ドラッカーの目標管理は、「自己目標管理」であり、現在の日本企業で行なわれているものの少なからずが、似て非なるものです。彼が言う目標管理は、現場で働く者は部門全体の目標を念頭に置き、上司とのやり取りを通じて、自分で自分の目標を決めるのです。ところが、時々目標を上から与えて管理するという、ドラッカーの考え方とは似ても似つかない制度になっています。本来は、主体的なものなのです。

 ドラッカーは、マネジメントにおいて、「何のためのものか?」というフレームの部分が大事だと強調し、スキルの部分はそれほど重視していませんでした。根源的な部分さえ、しっかり押さえていれば、ブレることはありません。それを一言に凝縮すれば、「世のため人のため」となります。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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