https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

世界は「民から官」

 戦後、西ドイツと共に「反共の防波堤」と位置づけられた日本は、アメリカの「ソ連封じ込め戦略」によって経済的繁栄を約束された。第二次世界大戦の敵国でありながら、西ドイツも日本もアメリカの手によってアメリカに次ぐ経済大国に育て上げられた。とりわけ日本は80年代に世界最大の債権国となり、逆にアメリカは世界最大の借金国に転落した。その日本は今、国家財政は赤字だが個人には1400兆円の金融資産がある。


 冷戦が終結すると当然ながらアメリカの政策は一変した。まずは日本経済を「ソ連の次の脅威」と位置づけ、次に日本が官僚主導の計画経済体制である事から、旧大蔵省と旧通産省の力を削いで計画経済の枠組みを崩し、日本の金融資産を民間ベースに取り込む工作に取りかかった。


 そもそも日本の銀行や証券会社は全く「民業」とは言えない。旧大蔵省管理下の「護送船団」で、競争のない既得権益であるから叩けばいくらでもホコリは出る。特にバブル期に積み上げられた不良債権が顕在化すると、アメリカから不良債権処理を最優先にするよう要求された小泉政権は、金融再生法によって銀行を次々国有化し、それをアメリカの民間ファンドに売却した。


 アメリカの最大の狙いは郵貯簡保である。その300兆円の資産が国家の管理から解き放たれれば、様々な金融商品の対象に組み込む事が出来る。小泉政権アメリカの筋書に沿う形で郵政民営化も実現した。しかし昨年の政権交代アメリカの思惑は外れた。もとより自民党政権にうんざりだったアメリカは、一方で政権交代を歓迎しつつ、しかし郵便局が国営化されて巨額の資金が国家の管理下に置かれるのは困る。そこで民主党政権に厳しい姿勢を取るようになった。それが普天間問題である。

民主党政権が名護移設を受け入れられない事を百も承知だからこそアメリカは名護移設にこだわる。アメリカにとって名護にメリットがあるからではない。他に目的があるからだ。

 そこで郵政民営化の見直しである。日本がこの経済危機から脱するためにはやはり財政出動が必要だが、国の財政はアメリカほどではないにしても巨額の赤字を抱えている。これを乗り切るには国債に頼るしかない。

 そのために郵貯簡保を国の管理下に置こうとする郵政改革法案は「民から官へ」の動きで、現在の世界の流れに符合している。そして財政赤字に苦しむアメリカの国債郵貯資金で購入すれば、アメリカが当初目論んだ資金の流れとは異なるが、アメリカの経済要求に応える事が出来る。それは普天間問題にも影響する筈だと私は思う。

政治家が主導して政府の管理を強める事のどこが「官の肥大化」なのか。国民の代表である政治家が主導する限り、それは国民主権の行使であり、「官」は政治のコントロール下に置かれている。

 また日本の銀行を「民業」と言う認識にも驚いた。

 政府の管理を強めたり、官僚の権限を強めることが「官の肥大化」になるのは、政治家より官僚が政府を支配する国の話である。政治家が官僚をコントロールする国家では官僚が民間企業に「天下る」事も何ら問題でない。