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それでも政治主導は機能している 民主党への情緒的批判に反論する|政局LIVEアナリティクス 上久保誠人|ダイヤモンド・オンライン

これらの批判は、鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長の「政治とカネの問題」「優柔不断の首相と剛腕幹事長」に対する感情的な反発であり、その背後で確実に進行している政策過程の制度変化を正確に捉えたものではない。

 これは、「国会の委員会審議で党議拘束をかけず、審議を尽くした後、採決直前に党議拘束をかける」「与党による法案修正もありえる」という民主党の国会改革に沿ったものだ(第38回)。鳩山首相の求心力や、党の影響力拡大を問題視することは事の本質ではない。自民党政権時代にはなかった、国会が本来持っている政府に対するチェック機能を次第に確保していることを積極的に評価すべきだ。

 英国を参考にした民主党の「政府に100人の政治家を官庁に送り込む」という構想では、元々党幹部も政府に加わることになっていた。各省政策会議の拡大はそれに沿ったもので、むしろ「政策立案の一元化」を強化するものだ。

 小選挙区制・二大政党制批判は、そもそも日本に「小選挙区制」という選挙制度をなぜ導入しようとしたのかという、過去の経緯を完全に無視している。それは、「中選挙区制」によって、1つの選挙区に自民党が複数の候補者を擁立するため、政党本位でなく個人中心の選挙となっていたこと。それが政策よりも利益誘導を重視する政治を生み、それが高じて政治腐敗の素地を招いていたことだ。


 また、中選挙区制下で自民党一党支配が固定化し、政権交代が極めて起こりにくくなっていた。その結果、政治から緊張感が失われ、党内では派閥資金が肥大化し、議会では政策論議の不在と運営の硬直化を招いていた。


 そして、その解決策として導入されたのが「小選挙区制」導入を基本とした選挙制度だったのだ。この選挙制度小選挙区制は、いくつかの問題点を指摘されながらも、結果として、自民党の派閥の弱体化、政党本位の選挙と政権交代を実現させた。

「政治とカネ」の問題も小沢・鳩山の問題が注目されるが、過去と比べれば「金権選挙」はほとんど死語になったのも事実だ(第31回)。

 しかし、英国と日本では状況が違う。英国では、長年小選挙区制・二大政党制による頻繁な政権交代によって、「政策の継続性」が維持できず、鉄道などインフラ整備が進まなかった。また、小選挙区制による「少数意見無視」の弊害も指摘されてきた。これは、自民党長期政権・官僚支配による「政策立案の硬直性」や自民党と野党の「慣れ合いによる妥協」が批判されてきた日本とは逆の状況なのだ。


 また、比例代表制・多党制連立政権が常態化しているドイツでは、小政党が主導権を握る悪影響が指摘され続けてきた。例えば、ドイツでは二大政党のキリスト教民主同盟社会民主党政権交代を繰り返す中で、小政党の自由民主党が常に政権入りし、1969年から1998年まで実に29年間に渡って外相ポストをほぼ独占してきた。

 要するに、英国での小選挙区制・二大政党制批判は、日本にそのまま当てはまらない。ある国の制度の短所は、別の国では長所になり得る。どの選挙制度・政党制がふさわしいかは、それぞれの国の議会政治の過去の歴史的経緯によるのである。