「自白はひっくり返る。過信せず、詰めの捜査を」。
「検察の先行きはバラ色ではない。国民の厳しい目にさらされる裁判員裁判を通じて若い検事に基本を教え、育てたい」。
【略歴】おおばやし・ひろし 一橋大卒。80年に法務省初の中国大使館1等書記官に。趣味は読書とテニス。座右銘は「苦あれば楽あり」。63歳。
「お前は被疑者(容疑者)にうそをつかれているんだ!」。新任検事として札幌地検に赴任し、大規模な手形詐欺事件の捜査に当たっていた際、上司からこう言われた。「うそなのか」。容疑者に迫ると、こんな答えが返ってきた。「(共犯者に)合わせて供述してもいいけど、検事さん、本当にそれでいいのか」
「人を見る力をつければ、被疑者から学ぶこともある」。
「自白は重要だが、過信してはいけない。供述を合わせようとして失敗するケースが多い」。
一度書店に入ると、10冊はまとめ買いし、読書に明け暮れる「熱中肌」。フランス研修を前に夜学でフランス語を学び、外務省研修所で中国語を習得した国際派としても知られる。検事初の1等書記官として赴任した中国の日本大使館では、残留孤児の国籍問題に直面。帰国支援に奔走した。
おおばやし・ひろし 昭和22年6月17日、東京都生まれ。63歳。一橋大法学部卒。47年に任官。法務省刑事局長、事務次官、札幌高検検事長、東京高検検事長などを歴任し、検事長定年当日に検事総長に就任。座右の銘は「苦あれば楽あり、楽あれば苦あり」。趣味は読書とテニス、散歩。