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〔アングル〕円高の収益悪化懸念は限定的だが、将来不安に立ちすくむ企業も

円高の進行に対して企業はグローバルな事業展開などにより耐久力を備えてきており、経済界では今のところ悲鳴をあげるほどの深刻な影響は感じていないとしている。ただ先行きも円高が進行しやすい国際環境にあるため、急激な円高進行や日本経済の空洞化問題への不安が増大しており、国内設備投資や新たな事業展開に二の足を踏む企業も出て来た。まず政府が円高に歯止めをかけるために為替介入で断固たる意思を示し、その上で早急に成長戦略に本腰を入れて取り組むべきとしている。

 6月以降円高が進行し続け、足元では1ドル85円を割るまでの状況となっているが、経済団体幹部は「今のところ企業の反応は、悲鳴を上げるほどの声にはなっていない」としている。事業の海外展開や決済通貨の工夫なども進み、企業経営にとっては事業や収益への影響はかつてに比べてさほど大きなものとはなっていないという。また手元流動性も潤沢にあり、資金繰りにも問題はない。


 中小企業についても円高の影響は表れていない。東京商工会議所相談センターでは「円高や景気悪化などを直接の理由にした相談は特に増えているわけではない」(山下昌敏所長)という。中小企業へのコストカット要請などは大企業の収益が悪化してからになりそうだ。

 ただ、円高の影響は確実に実体経済に影響しつつある。けさ発表された貿易統計では7月の輸出の伸びが前月から減少。伊藤忠商事・主任研究員・丸山義正氏は、数量ベースの実質輸出は前月比増加しており、金額ベースでの輸出減少は明らかに円高の影響と指摘している。


 1ドル85円以上の円高水準が定着するとなると、中長期には対応できても短期的には想定レートとかい離して今期の収益悪化要因として無視できなくなる企業もありそうだ。

 8月13日に公表したロイター短観でも、足元の景況感はリーマンショック前を上回る高い水準に上昇し、大きく改善している一方で、先行きの景況感は大幅に悪化。先行きが悪化方向となるのは3年ぶりで、企業の先行き不安が非常に強いことを表している。


 調査へのコメントでは、政策効果のはく落懸念に加えて「円高の進行や米経済の先行き不透明感が不安」(輸送用機器)といった声が増えたのが特徴だ。内需型企業からも「円高や景気低迷による減収」(卸売)を懸念する声が寄せられた。

 こうした先行き不安の増大のもとで、企業が求めている政策は「まず為替介入により急激な円高進行に断固たる姿勢を示して歯止めをかけてほしい」(経済団体幹部)ということ。日銀の追加緩和策については効果が薄いとみられ、さほど期待感は高まっていないもようだ。さらに、中長期的な日本経済の空洞化へ早急に対処すべく、成長戦略に本腰を入れるべきだとしている。


 中小企業については、円高への直接対応というより、円高がデフレを招き、内需の伸びが鈍化する見通しが強いことから「アジアへの進出に関する相談は相当増えており、今年2月に開設した専門窓口の強化のために政府や東京都に支援を要請したい」(山下氏)としている。