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景気刺激策に成功しても オーストラリアは“危機”|スティグリッツ教授の真説・グローバル経済|ダイヤモンド・オンライン

 危機が襲ったとき首相の座にあったケビン・ラッドは、世界のあらゆる国の対策の中で最も優れたものの一つといえるケインズ流景気刺激策を実行した。彼は早期に行動して迅速に資金を投入することが重要だと認識していたが、危機がすぐには収束しない恐れがあることも理解していた。そこで、景気刺激策の第1弾は現金による助成とし、第2弾として実行に多くの時間のかかる投資を行うことにしたのである。


 ラッドの景気刺激策は成功した。オーストラリアの景気後退は先進国の中で最も短く、最も軽かった。にもかかわらず、人びとの主な関心が、投資したカネの一部があまり効率的に使われなかったことや景気後退と政府の対策によって生まれた財政赤字に主として注がれてしまったことは皮肉である。


 もちろん、われわれは資金ができる限り生産的に使われるようにするために努力すべきだが、人間や人間の組織は誤りから免れられないものだ。しかも資金が確実に効率的に使われるようにするためにはコストがかかる。経済用語で言うと、効率性のためには配分にかかわる限界費用(さまざまな事業の相対的な便益について情報を得るための費用や投資をモニターするための費用)が限界便益と等しくなくてはいけない。要するに、ムダを防ぐためにカネを使い過ぎたら、それはムダづかいになるのである。

 なにがなんでも財政赤字を削減すべきだという考えは理にかなっていない。国の債務はその国のバランスシートの片側にすぎないからだ。ただ単に赤字を減らすために(教育・インフラ・技術投資のような)高いリターンを生む投資を減らすのは本当に愚かなことだが、債務総額が低いオーストラリアのような国の場合は特にそうだ。実際、国の長期債務について心配するのであれば――当然心配すべきだが――このようなやみくもな赤字削減論は特にばかげている。これらの公共投資によって実現されるより高い成長は、歳入の増加をもたらすからだ。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20091011#1255237694