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誰が小沢一郎を殺すのか?―画策者なき陰謀 | 著=カレル・ヴァン・ウォルフレン/訳=井上実

 私が執筆を思い立ったのは、抜本的な政治改革という、多くの日本人が明確な意思表示をもって臨んだ類い稀なるチャンスが失われようとしていると感じたからだ。
 その国にとってとてつもなく重要な展開は、しばしば、大多数の国民が気づかないうちに起こるものだ。人々の関心はきわめて些細な出来事に引きつけられがちである。小沢氏が起訴されたことは当然のことながら国民の関心の的となったが、大勢の人々にとって、それはエンタテインメントのひとつにとどまっているらしい。そして、ある重大な事実、すなわち小沢氏が日本の政治にとってどれほど重要な役割を果たしてきたかという事実を、大半の人は忘れてしまったかに思われる。
 そもそもこれまでの日本では、政策立案をするために必要な機能が停止したままの状態が続いてきた。それは、半世紀以上にもわたる旧態依然とした体制が維持されるよう、自民党が取り計らってきたためなのであり、民主党自民党から政権を奪い返した意義は、ここにこそあったのだ。
 そして、彼らが自民党から政権を奪い返すことのできるような状況を生み出した人物こそ、小沢一郎氏にほかならない。ところが民主党の政治家の多く、おそらくその半数までもが、真に抜本的な改革をしようという当初の熱意を失ってしまったかに見える。そうした人々は小沢氏の評判を貶め、彼の政治生命を抹殺しようと生み出された架空のフィクションに乗せられてしまったらしい。
このようなフィクションを生み出した人々、特に日本の検察や新聞の編集担当者たちは、かなり早い時点で、小沢氏は現体制という日本の政治システムにとって脅威となる人物であると断定したのだろう。その判断自体は間違っていない。小沢氏がその誕生に手を貸した民主党は、この旧態依然とした政治システム側からすれば、確かに脅威だったのである。

 日本が解決すべき問題のひとつは、国際社会における日本のポジションである。日本を直接取り巻く東アジア地域の状況は、一変した。ところが日本政府はこれまでのところ、日本とその近隣諸国の双方にとって有益な方法で新しい状況に適応することができずにいるようだ。
 この問題には、日本のアメリカへの依存体質が密接に関係している。ではなぜアメリカに依存するのか? それは、政治的な舵取り機能を果たす真の政府の存在が日本には欠如しているからである。これこそ、民主党が改革しようと望んだことなのであった。