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白川総裁、日銀批判に反論―「日本のバーナンキ」の巻き返し

 だが、白川総裁は、同時に、そうした政策は必ずしも有効ではないとも述べている。総裁は、長引くデフレに対するエコノミストの見方を変えようとしているようだ。日銀ができることには限界があると述べ、ぜい弱な個人消費や企業投資には、マネーサプライ(通貨供給量)だけでなく、日本の人口減少が大きくかかわっており、前者は日銀が統制できるが、後者はその範囲外であるとした。

「一面だけを捉えた批判があることに失意を感じる」。

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、プリンストン大学教授時代、日銀の政策が不十分であると批判してきた人物の一人であった。だが、その後同僚に対して、ときに辛らつな当時の発言を悔いていると告白している。

 白川総裁は今、形勢逆転に打って出ている。スイスで定期的に開催される世界主要中央銀行総裁による非公開会合では、慎重に用意された原稿を基に、たびたびミニ講義を行っている。昨年9月の会合では、FRBが景気刺激に向けた債券購入措置を準備するなか、日本の経験を基に、そうした非伝統的な政策には限界があることを警告した。

 白川総裁は、意外にも日本の国内外におけるリーダーシップを代表する存在として注目を集めつつある。同総裁は、厳しい批判は受けているものの、日本の弱体化した政府においては最も安定した政策担当者であるためだ。

 白川総裁は、デフレについて自身の考えを展開している。彼はミルトン・フリードマン氏の教えも受けている。伝説のエコノミストフリードマン教授が1975年に行った最後のシカゴ大学の授業を受けたことを、白川氏は誇らしげに語る。フリードマン氏は、インフレについて、中央銀行がどれだけ資金を経済に循環させるかという仕組みにすぎないと述べている。資金の多寡で、インフレの強弱も決まるという考えだ。


 白川総裁は、デフレは現金の経済への大量注入だけでは対処できないということを日本の経験が示していると指摘。「(フリードマン氏の)命題は事実によって反証されている」と述べた。

 総裁は別の要因も挙げる。日本の企業と家計は、人口減少と生産性上昇率の低下などによって、日本の長期的な成長見通しに弱気になり、支出と消費を抑制し続けている。総裁は、日銀が問題解決の一助となる得るプログラムを提供しているが、こうした問題は日銀が独自で解決できないと語った。

 白川総裁は、キャリアの大半を日銀内で積み重ねてきたが、1970年代の若かりし頃、2年間シカゴに留学した時期があった。教授陣は彼に感心し、残って博士号(PhD)を取得するよう勧めた。しかし、日銀からは、戻るか、辞めるかの選択しかないと言われた。「辞める勇気はなかったので、日銀に戻った」と白川総裁は言う。


 ある意味においては、白川総裁は、若き日のハードな大学院の経験と同じように中央銀行を運営している。彼は出世階段を上るにつれ、何時間ものブレーンストーミングを行い、徹底的な調査をスタッフに求めることで有名になった。


 総裁は、休む間もなく走り続けるところが似ているのか、行内ではひそかに「Qちゃん」(マラソン高橋尚子選手の愛称)と呼ばれている。


 総裁はそうたとえられることを嫌っていない。彼は言う、「日銀も、いわば、非伝統的政策を推し進めるフロントランナーのようなものだ」と。