- 作者: 升田幸三
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/08/01
- メディア: 文庫
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GHQから「日本の将棋は取った相手の駒を自分の兵隊として使用するので、これは捕虜の虐待ではないか」と問われた升田は次のように反論する。
「冗談をいわれては困る。チェスで取った駒をつかわんのこそ、捕虜の虐殺である。そこへ行くと日本の将棋は、捕虜を虐待も虐殺もしない。常に全部の駒が生きておる。これは能力を尊重し、それぞれに仕事場を与えようという思想である。しかも敵から見方に移ってきても、金は金、飛車は飛車と元の官位のままで仕事をさせる。これこそ本当の民主主義ではないか」
「集中心を持て。何事にも当面の仕事に全力を集中せよ」ということを悟ってから急激に将棋の腕が上がっていった、ということ。
何気なく書かれていますが、私はこのくだりを読んで「集中する」ということの大切さにハッと気づかされました。
無学であっても、高い志があり、目の前の現実と闘って知恵を獲得しながら努力を積み重ねていくと、この社会では上へ上へとのぼっていくことができるのだ。そんなふうに夢を与えてくれる。波乱万丈の自伝。