「単に一部の選挙区の定員を増減するだけではなく、都道府県を単位とする現在の選挙制度の仕組みを見直して不平等な状態を解消すべきだ」
一方で、選挙の無効については訴えを退けました。
衆院小選挙区選についても昨年3月に違憲状態と結論づけており、衆参両院が同時に“違憲の立法府”と断じられる前例のない事態となった。
選挙制度の仕組み自体の見直しが必要であることは、21年の大法廷判決で指摘されていたが、法改正のないまま本件選挙に至った。違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかない。
大法廷判決は本件選挙の約9カ月前であり、見直しには高度な政治判断が求められるなど相応の時間を要することは認めざるを得ない。選挙までに定数の配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず、憲法に違反するに至っていたということはできない。
国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる不平等状態を解消する必要がある。
【反対意見の要旨】
田原睦夫裁判官「参院選制定時の最大格差2.62倍を上回っている選挙区の投票の権利については、実質的に侵害されているというべきだ。25年選挙が現行法の枠組みの下で行われるならば、選挙無効の判断をもって対処すべきだ」
須藤正彦裁判官「2倍前後の最大格差が考え得る許容の範囲。相当期間にわたり、ほとんど是正措置が講じられることのないまま著しい不平等状態が慢性的に維持されており、この不作為は立法裁量権の限界を超える。憲法に違反するに至ったというべきだ」
大橋正春裁判官「24年8月に国会に提出された改正法案の4増4減は最小限度の改革にとどめる意図によるものと評価せざるを得ない。なぜ抜本的改革がなされないのか国民に明らかにもされず、憲法違反があったと判断せざるを得ない」