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日本株は、いったん大暴落する可能性がある

アベノミクス」で日本は復活する。少々のリスクが顕在化しても、金融緩和で乗り切れる――。いまの日本のマーケットには、そんな漠然とした楽観論が横溢している。原田武夫氏(元外務省出身、原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役)は、そうした楽観にクギを差し、「複合リスク」の同時炸裂を警戒せよ、と説く。

先日、マーケットの最前線で活躍する盟友と酒を酌み交わす機会があった。いわゆるアセットマネジメントの世界では、わが国において知らぬ者はいない人物である。しかし決してメディアという意味での「表の世界」に出て来ることはない。そうした人物たちのことを、私はマーケットの猛者と呼んでいる。

 マーケットの猛者と一般人をくっきりと分けることはただひとつ。前者はたぐいまれなリスク感覚を持っているということである。普通ならば思いもつかない「世界の裏の裏」まで考え抜いたうえで、ポジションをつくり上げている姿を見るたびに、目が覚めるような思いがする。


 彼は、実に用心深い。ありとあらゆる可能性・リスクを織り込んだうえで、「今この瞬間」における最善の抜け道を考え出す。言葉を交わすたびに、教えられることしきりなのである。

 ところが今回だけは違った。「円安・日本株高」をもたらしたアベノミクスに対する見方があまりにも緩かったのである。むろんリスク分析をしていなかったわけではない。だが彼いわく、あらゆるリスクを踏まえたうえであっても、「日本独り勝ち」は間違いないのだという。


「1ドル=120円くらいまではまったく問題なく、円安になるのではないか」とまで聞いた。

いつになく緩い見通しを語るこのマーケットの猛者である盟友の言葉を聞いて、私は正直、背筋が寒くなった。「このレヴェル」のリスク感覚を持った人たちであっても、あまりにも無防備であることが明らかになったからだ。彼が言うとおり、確かに個別のリスクについてはそれが何とか収束するような可能性を考えることは十分可能だ。それでもなお私は「しかし・・・」と食い下がってこう言ったのである。


「単独のリスクが順番に炸裂するだけなら、出遅れた量的緩和・金融緩和の影響で円安へと誘導され、日本株は高騰し続けるでしょう。ただ、リスクが単独・個別にではなく、何らかの理由で一斉かつ連鎖的に炸裂したらどうでしょうか」

これを聞いたマーケットの猛者である盟友は大きくうなずいた。「なるほど、それは確かに別の話だ。ありとあらゆるリスクが同時に炸裂するようなことがあれば、今やコンピューターのアルゴリズムによって取引されている金融マーケットは大混乱に陥るはず。なぜならばそうした取引システムの上で多くのリスクは個別に観念・管理されているからだ。これに対して、同時にリスク炸裂となるのはまさに想定外なのであって、コンピュータそのものが判断停止となる危険性が高いと思う」

確かにこうした直近の事例を見る限り、しばしば大声で語られる「マーケットのリスク要因」なるものの影響力は、それほどでもないような気がしてきてしまうのである。そして一つひとつのそうしたリスクがやがて炸裂するにしても、総じて言えるのは「わが国が遅ればせながら始めることとした量的緩和による円安誘導と株高進行は続くはず」という楽観論が横行してしまっているのだ。

 だが果たしてそのように油断し、弛緩したままでよいのであろうか。この問いに対する私の答えは断じて「否」だ。その理由はただ一つ。今、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢の中で注目されている複数のリスクが明らかに互いに結びついているからである。
そしてその密接なつながりを前提とすれば、これら複数のリスクは個別に炸裂すると考えるべきではないのであって、むしろ複合的かつ同時多発的に炸裂すると考えるべきなのである。そう、「複合リスクの同時炸裂」こそ、いま最も警戒すべきことなのだ。

 ほかにも、同時連鎖して炸裂する危険性の高いリスクは多々あるが、このへんで止めておく。だが大事なことは、仮にそう遠くない将来にこうした複合的かつ同時多発的なリスク炸裂となった場合、安倍晋三政権は間違いなくさらなる量的緩和・金融緩和へと踏み出すということなのである。世界中のリスク炸裂を受けて、むろん「円急伸・日本株暴落」となる。だが、その後どうなるのかといえば程なくして日本マーケットは復活し、むしろ「日本バブル」として、その後に名を残すほどの歴史的な高騰局面が見られるはずなのである。複合的かつ同時多発的なリスクの炸裂という、コンピュータ上のアルゴリズムにとっては想定外の事態に見舞われ、巨額の損失を被ったマーケットの猛者たちは、今度は一転して再起動となるこの第二の平成バブルを、よってたかって押し上げていくことになる―――。