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焦点:信金・信組の道険しい「本業回帰」、届かないアベノミクスの恩恵 | Reuters

資金需要が盛り上がらず融資拡大ができない、という稚内信金の現状は、国内の信金・信組の多くが同様に抱える問題だ。日銀の貸出・資金動向によると銀行の貸出は7月に前年同月比2.3%増と、今年に入り回復の兆しを見せているが、信金の貸出はわずかながらではあるが前年同月比マイナスに沈んだままだ。


昨年末の第二次安倍政権の発足は、地方の中小金融機関にとって現状打開の後押しになるはずだった。「アベノミクス」の大きな柱として、日銀は新規に発行される国債の約7割にあたる量を買い取り、市中に資金を供給する異次元の金融緩和策を発表。企業の資金需要が高まれば、稚内信金のような地域金融機関や地銀、大手行にとっては、預金を国債運用ではなく貸出業務に回す、という本業回帰の経営シナリオが描ける。


しかし、中小企業を主要な貸出先とする信金・信組の多くは、アベノミクスの恩恵を全く実感していない。

国内の事業法人(金融機関を除く)は、バランスシートに225兆円という潤沢な現預金を抱えている。借入れが本格的に拡大すると予想するのは少数派だ。

例外がないわけではない。今年4月の信用金庫法の施行令改正により、信金は取引先の海外子会社に対し直接融資をできるようになった。規制緩和を活かし、浜松信用金庫静岡県浜松市)は9月、古山精機のインドネシア現法に国際協力銀行JBIC)と計1億円の協調融資を実施。取引先の海外事業の拡大をJBICと共同で後押しするのは信金として初の事例となった。


しかし、こうしたビジネス拡大を後押しする政策支援の枠組みがあるにもかかわらず、浜松信金のような取り組みは全国的な広がりをみせていない。融資対象の中小企業に海外進出のニーズが少ないという事情と同時に、長期のデフレ経済下で防衛的な経営姿勢が定着し、融資リスクを積極的に取れなくなった信金・信組の企業体質も背景にある。

一方で、4月の日銀による大規模緩和で国債マーケットのボラティリティ―が一時的に急上昇し、一部の信金国債頼みの運用のもろさを痛感した。「期初に予定していた国債の購入を半分にせざるを得なかった」と首都圏の信金の企画担当者は打ち明ける。


最近は金利の動きも落ち着いてきたものの、「金利が低いならば低いままで安定してくれればいいが、一方で日銀は(物価安定上昇率)2%と言っているし、わからない」(同担当者)。多くの金融機関が「安全弁」としてきた国債運用の先行きに不安が生じてきたことは否定できない。

今年3月末までの過去10年間、全国の信金国債保有残高は69%増の10.6兆円に膨らんだほか、社債保有残高は50%増の16.2兆円に膨らんだ。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T: 株価, ニュース, レポート)、みずほフィナンシャルグループ(8411.T: 株価, ニュース, レポート)、三井住友フィナンシャルグループ(8316.T: 株価, ニュース, レポート)の3メガにいたっては、13年3月期に国債運用で3社合算で業務純益の24%にあたる約6660億円を稼ぎ出した。それほどまで国債依存が進んでいたことの証でもある。

都市銀行は1980年代に20行あったが、小泉政権の下で強行した不良債権処理をきっかけに、現行の3メガバンク体制に落ち着いた。一方、信金・信組は1990年代に計400超あったが、この22年間でおよそ半減した。


しかし、体力が小さい地域金融機関にとって、将来の経営拡大や生き残りをかけた提携や買収・合併という大胆な選択を迫られる状況はなお続いている。八千代銀行(8409.T: 株価, ニュース, レポート)と東京都民銀行(8339.T: 株価, ニュース, レポート)は2014年の経営統合を視野に交渉を開始した。融資拡大という本業の立て直しが進まなければ、これに続く再編の動きがさらに広がる可能性も否定できない。