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世界にとって「右翼のルーピー」となった安倍首相:ダボス会議の衝撃 - 站谷 幸一

実は、この発言、国際関係論を大学一年生が学ぶ内容を理解していれば、かなり危険と受けとめられても仕方がないものなのだ。欧米人が大学等の国際関係で最初に学ぶのは、古代ギリシャペロポネソス戦争である。これらの戦争の原因として、いささか教訓的に語られるのは、「最終的に戦争が回避できない」という政策決定者の確信が戦争を呼び寄せるということである。

駐日大使候補になったこともある、ジョセフ・ナイハーバード大学教授)は、彼の大学生向けの教科書でわかりやすくこれを説明している。少し長いが、わかりやすくして引用しよう(注1)。

「……ここに、戦争が不可避だと確信することが国際政治において如何に破壊的かの理由がある。戦争が不可避だということになれば、お互いの関係はもう終わりに近いわけである。終わりとなれば、相手を今後も信じてよいかということになる。なにせ命がかかっているのである。であるならば、相手を信頼し、協力し続けるよりは、先に裏切った方が安心ということになる。アテネ人も同様の選択を行い、どうせ戦争になるならば、敵国を不安にさせようが戦争になろうが、どうしようが自国の戦力を強化する為に中立国を侵略した方がいいとし、破滅への道を選択した」

安倍首相はまさしく、そうした思考法を満面の笑みで開陳し、しかも、代表的な駄目な事例とされる第一次大戦を欧米のエリートの前で、しかも欧州で持ち出したのである。

こうした状況に逆に相互依存関係に慢心した各国、特にドイツのヴィルヘルム二世に代表される政治指導者の振る舞いや、相互依存関係の深さによる国際間の摩擦の増大は危機を高め、最終的にサラエボの銃声を契機に戦争に突入した。そして、クリスマスまでに終わると思われる戦争は破滅的な結果となって、4年にもわたった。これが欧州の歴史である。

そんな欧州のエリートが集まる会議で、「戦争になるかもしれないけど、相互依存関係があるので大丈夫です」と、しかも第一次大戦直前の英独関係を使って説明するのは、ドイツを戦争に導いたヴィルヘルム二世の後継者を襲名披露しつつ日中戦争開戦をアピールしたいのか、もしくは、日本の政治指導者は余程の「馬鹿(ルーピー)」だとアピールしたいのか、のどちらかでしかない。

また、特に深刻なのは、私も彼らに言われたことがあるが、よく日本側が英米などで言われる、「安倍首相は、今なら勝てると思っているのではないか?このままでは日中は軍事的に逆転する。であるならば今ここで戦争をしようと考えているのではないか。勝てる内に、米国を引きずり込んで、中国の軍事力を粉砕して、将来に渡る安心を得ようとしているのではないか?実際、君たちだって1941年に真珠湾を攻撃したときだって、今なら勝てるが将来は米海軍の物量に勝てないって理由で対米戦を決意したじゃないか」という欧米の一部の疑念が証明されてしまったことである。


実際、安倍首相は、尖閣諸島周辺の紛争でならば海自・海保は勝利できると信じているとの話も私でさえ聞くので、あまり信じたくはないのだが、欧米人がそう思ってしまうのは無理もない。(むしろ、これは本当なのかもしれない)

まとめると安倍首相は、欧州でも戦争をもくろむ危険な指導者、それか極めつけの馬鹿、つまり右翼のルーピーと思われたようだ。ついに米国だけでなく、欧州他でも右翼のルーピーとなってしまったのである。

第一次世界大戦から学ぶべき教訓〜戦争なんてあり得ないというのはあり得ない〜

少なくとも「whether a war between China and Japan was “conceivable”(日中間の戦争は考えられるか)」という質問に対しては、日本の首相という立場上明確に否定しておいた方がよかったのではないでしょうか。外交リアリストは、剥き出しのリアリズムを見せることなく、自分の言葉をキラキラした理想主義的な表現で砂糖をまぶして印象を良くしますよね。

さて、第一次世界大戦を招いた要因のひとつは、ドイツの台頭、それによる勢力均衡の崩壊です(他にも多くの背景がありますが)。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140123#1390474942