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コラム:欧州議会選で激震、EUは「死の淵」に | Reuters

今回の選挙結果は、加盟する28カ国の統合深化を掲げるEUに重傷を負わせたに等しい。EUは死の淵にあると言ってもいいかもしれない。以下にその理由を述べたいと思う。


1.英国はEUを脱退するかもしれない。キャメロン首相は、次期総選挙で自身が率いる保守党が勝利すれば、EU残留か離脱を問う国民投票を実施すると公約している。首相は、EUの持つ権限を可能な限り加盟国に戻すべきとするEU改革案を掲げているが、その実現性が怪しくなれば、英国の有権者は残留より脱退を選択するだろう。


政治的権限を加盟国に戻すという案は、反EU派が台頭している国々では、「統合深化」より魅力のある選択肢となり得る。しかし、もしキャメロン首相の改革案が欧州議会で受け入れられず、低成長にあえぐ欧州が弱体化したままでいるなら、EU脱退という答えが選ばれる公算が大きい。


2.欧州議会選で議席を獲得したEU懐疑派を詳しく見ると、反ユーロ政策を掲げる「ドイツのための選択肢」といった比較的穏健な政党から、ハンガリーの「ヨッビク」やギリシャの「黄金の夜明け」といった極右政党まで幅広い。ただ彼らは、欧州議会で何らかの急進的行動を起こすという方向性では一致している。


多くの国では、欧州議会での議席は、引退間近の政治家や自国の議会で議席を得られなかった政治家のためにある閑職とも言える。欧州議会には仕事熱心な議員も多いが、そうでない議員もたくさんいる。議論は往々にして退屈で、24の言語に通訳されるため進行が遅く、言葉は空席の列にむなしく響き渡る。


しかし、今回の議会選で様相は一変する。「解体業者」のグループが乗り込み、EU統合推進派は彼らと戦わなくてはならなくなる。もし統合推進派に戦う勇気が足りず、反EU派のメッセージが目立ち続けるなら、EUは苦境に陥るだろう。


3.2000年のユーロ導入は時期尚早だった。欧州の社会民主主義国家に肯定的なポール・クルーグマン氏でさえ、ユーロ導入は早計だったと考えている。ユーロは危機を脱したが、まだ完全に助かったわけではない。緊縮財政反対派はドイツを攻撃することで、債務危機で最も打撃を受けたPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランドギリシャ、スペイン)をデフォルトさせず、ユーロ圏にとどめておくという合意をひっくり返そうとするだろう。


ドイツはEUの要だ。メルケル首相はこれまでのところ、不本意ながらも、ユーロ圏の脆弱(ぜいじゃく)な安定性を保証するには十分な役割を果たしてきた。ギリシャやスペインの左派などはドイツが「宗主国化」していると主張するが、もしドイツがこうした国々の経済を持続させる意思を失えば、ユーロ圏は再び危機に陥る。そしておそらく、今回は命取りとなる。


欧州議会選の結果がもたらす変化の全貌は、これから明らかになってくる。「より大きな欧州」をモットーとし、熾烈(しれつ)で寝技を必要とするような政争とは無縁だった伝統的なEUの政治家には試練が待っている。