焦点:サブプライム危機、再発しても前回と違う場所か | Reuters
金融監督機関が、市場の浮かれぶりは経済の実態とかい離しており、2000年代に発生した信用バブルの生成・破裂のサイクルが何らかの形でまた繰り返される様相があると警告したため、返済能力の低いサブプライムの借り手に起因する新たな時限爆弾を回避できないのではないか、という不安を拭うのは難しい。
しかし新たな危機が醸成されつつあると考える場合でも、前回と同じ個所で発生することはなさそうだ。少なくとも先の金融危機の震源となった米国の米住宅担保証券(MBS)でバブル破裂が起きることはないだろう。
規制強化、引き受け基準の厳格化、新規住宅ローン申請の20年ぶりの水準への落ち込みなどの要因が重なって、米国の民間MBSの発行規模は年初来わずか6億ドルと、2005年に記録した過去最大の7260億ドルから大幅に落ち込んだ。
さらに言えば、米国ではサブプライム住宅ローンを裏付けとする証券はほぼ完全に消滅した。サブプライム自動車ローンを担保とする証券は起債が続いているが、往年の規模にはまるで及ばない。
しかし国際決済銀行(BIS)が先に公表した年次報告は、世界の債券市場が再びリスク圏入りし、崩落に向かっているとの見方を示唆するものだった。BISが注目したのは、銀行ではなく資産運用会社で社債や国債の保有が増え続けている点。経済が潜在成長率を下回る伸びにとどまるのにデフォルト率が過去最低で借入金利が押し下げられ、信用スプレッドが記録的水準までタイト化しているのは不可解だとした。
報告は「市場の好調と基調となる世界経済の動きの食い違いに困惑を禁じ得ない」との見解を示した。
特に注目されるのは家計ではなく信用度の低い企業の借り入れ。トムソン・ロイターのまとめによると、世界の投資不適格級債の新規発行額は4─6月期に1480億ドルとなり、四半期ベースで過去最大を記録した。先の信用バブル破裂前は、四半期の起債額は平均300億ドル程度だった。
加えて昨年は、企業が契約調印した新規のシンジケートローンに占める格付けの低いレバレッジドローンの比率が40%を超え、05─07年を上回った。財務制限条項による債権者保護を盛り込まない資金調達も増えている。
では、この分野が新たなサブプライム危機の震源になるのだろうか。銀行が金融危機後にこうした債券を大量に保有することができなくなったことが、銀行システムを危機から遮断するのに一役買っている。しかしその一方で、銀行の市場仲介能力が限られていることで、価格発見が困難になったときに市場が大混乱に陥るリスクが生まれており、ショックがコーポレートファイナンス全般や資産運用会社に及ぶ恐れがある。
詰まるところ、金融危機後に銀行が融資を縮小したため、多くの企業が債券市場での調達に向かった。もしも、この資金調達経路が突如遮断され、借り換えが困難になれば、衝撃が広がるだろう。
「安全」とされる国債からインフレ調整後で1%以下の利回りしか手に入らない投資家にとって、ジャンク債は運用目標を達成する唯一の手段かもしれない。そして金利が上昇するまでこの構図は変わらないだろう。
BISは金利上昇の危険性を指摘している。「この構図はいずれ金利が正常化するときに試練を迎える」という。来年からの金利上昇が不可避とみるならば、投資家は07年ほどではないにしろ何らかの混乱が起きるのに備えるべきだ。
しかし高齢化や過去の容赦ない債務返済のせいで経済の基調は向こう数年間、潜在成長率を下回り、各国中央銀行はぎりぎりまで金利を据え置くとの見方が多い。しかもインフレが落ち着いているため、利上げが始まってもそのペースは緩やかになりそうだ。
ノーベル賞受賞の経済学者ポール・クルーグマン氏は今週、米紙ニューヨーク・タイムズのブログで、マクロ経済状況を無視して人為的に金利を押し下げるのは難しいとの見方を示した。
今回は違うのかもしれない。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140704#1404470656
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140704#1404470657
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140703#1404384150
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140703#1404384153
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140630#1404125638