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焦点:ECB総裁が成長路線に舵、瀬戸際のユーロ圏景気テコ入れへ | Reuters

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は週末の講演で各国政府に財政出動を求めるとともに、追加的な金融緩和策にも含みをもたせた。財政緊縮路線から成長回復へと大きく舵を切った格好だ。


ワイオミング州ジャクソンホールで開かれたカンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウムで総裁は22日、ECBの金融政策と併せて財政政策がより大きな役割を果たせるなら「全般的な政策姿勢に寄与する」とした上で、「その余裕はあると思う」と述べた。


これはユーロ圏危機の勃発以来貫かれてきた、ドイツ型の緊縮財政路線をECBが支えるという暗黙の連携関係に一線を画す発言だ。ドラギ総裁はフランスやイタリア寄りへと立ち位置を変えた。財政緊縮よりも財政刺激の方に軸足を移したのだ。


INGのエコノミスト、カルステン・ブレゼスキ氏は「大転換だ。景気が回復しない可能性を認識し、ユーロ圏の問題が構造改革や緊縮策で対処できる範囲を超えていることを認める発言だ」と語る。


ユーロ圏は景気後退の瀬戸際にあり、インフレ率も多くの地域でゼロに近い。そこでドラギ総裁は需要拡大のための財政出動を求めるようになった。危機に見舞われたユーロ圏周縁国はこれまで財政緊縮策にあえいできたが、ウクライナ危機が景況感に影を落とし、中核国の景気も悪化し始めている。


ドイツのIFO経済研究所が25日発表した8月の独業況指数は4カ月連続で低下。29日に発表されるユーロ圏の8月消費者物価指数(CPI)は0.3%と、ECBの目標値2%弱を大幅に下回ると予想されている。


<不吉な発言>


ドラギ総裁はジャクソンホールでの講演で「(8月に)物価予想があらゆる領域で大幅に低下したことを、金融市場は示唆している」とも指摘した。


総裁はECBが好む物価予想の指標、いわゆる「5年間、5年先のブレークイーブンレート」の低下に言及した。これは今から5年先の期間5年のインフレ率を投資家がどう予想しているかを示す指標で、8月だけでもおよそ20ベーシスポイント(bp)低下して1.96%となっている。トレーダーによると2010年に付けた過去最低値は1.90%前後で、この水準に近い。


ベレンバーグ・バンクのエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏はドラギ総裁講演の中で物価予想の変遷に触れた部分を「不吉」だと言う。「ECB理事会はこうした動きを認識し、中期的な物価安定を確保するために、責務の範囲内において利用可能なあらゆる手段を行使する」という部分だ。


この発言によって9月4日のECB理事会の注目度が高まった。金融市場はECBが量的緩和(QE)に踏み切る可能性について頭の体操を活発化し始めている。


9月会合では激しい政策議論が予想されるが、QEに踏み切るのは時期尚早だろう。


QEはユーロ相場をさらに押し下げて輸出業者の価格競争力を高めるかもしれないが、何十億ユーロも投じて既に過去最低水準に下がっている国債利回りを押しつぶしても意味がない、との反対意見もある。


ECBはQEに踏み込む前に、的を絞った長期資金供給オペ(TLTRO)の効果を見極めようとするだろう。ECBはまた、資産担保証券(ABS)購入の準備にも力を入れている。


シュルツ氏は「総裁は、次回理事会で何らかの追加策を講じるとのサインを送りたかったわけではないだろう。しかし彼は間違いなく議論の激化を予想しているとは思う」と話し、「QEは確かに視野に入った」と続けた。


<他の中銀からの圧力>


ECBは他の中央銀行から追加策を迫られている。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は22日ジャクソンホールで、ECBは景気とインフレを浮揚するために行動をとるべきだと訴えた。


日銀の黒田東彦総裁はイタリア紙に対し、ユーロ圏がデフレに陥る可能性は低いとの見方を示すとともに、デフレリスクが深刻化した場合は欧州中央銀行(ECB)が行動を取ると確信していると語った。


ドイツ連銀その他のユーロ圏タカ派陣営は、ドラギ総裁によるジャクソンホールでの講演を受け、居心地の悪さと圧力を味わうだろう。とりわけドイツ国民の間では金融緩和への根深い不信感がある。


25日付の南ドイツ新聞は社説で「次々と資金をつぎ込むことは万能薬ではない」と主張。各国が経済を立て直すことが必要で、それは「中央銀行家ではなく政治家の仕事だ」と論じた。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140823#1408790805