STAP論文:故意か過失か「証拠なし」 調査限界も - 毎日新聞
だが、ES細胞を誰が混入したのかの特定には至らなかった。調査委は、論文著者の小保方(おぼかた)晴子氏(31)がSTAP細胞作製時に所属していた研究室の見取り図を示しながら、混入可能な経路や鍵の取り扱いなどについても説明。無人になる時間帯も多く、誰でも混入は可能だったと結論づけた。
「関係者に『ES細胞を混入したか』とぶしつけな質問をしたが、全員否定した。誰が混入したかが分からなければ、故意か過失かも決められない。科学者として証拠がないとしか言えない」と、桂氏は唇をかんだ。桂氏によると、小保方氏本人は混入の可能性を認めたが、「私が混入させたことは絶対にない」と答えたという。小保方氏は4月の記者会見では「混入が起こり得ない状況を確保していた」と主張していた。
結果的に「おかしなことがいっぱいあるのに、(論文が)非常に優れた研究者の目を通って表に出てしまった」(桂氏)要因について、桂氏は、小保方氏が所属していた若山照彦・山梨大教授の研究室の問題を強調。「生命科学の研究者は普通論文の元データをチェックするのに、若山研ではしなかった」と批判した。
理化学研究所が設置した最初の調査委は今年3月、対象を6件に絞って調査を終えたが、6月には、共著者の若山照彦・山梨大教授の研究室に残された試料の一部や公開されていた遺伝子データの解析で、ES細胞の混入を強く示唆する結果が明らかになった。さらに主要著者が所属した理研発生・再生科学総合研究センター(当時)の有志による調査でも、論文の多くの図表類に疑義が指摘された。しかし、理研は論文の徹底的な調査を先送りにし、問題解決を長期化させた。