- 作者: 木村清孝
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2015/01/24
- メディア: 文庫
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このように『華厳経』は、まず第一に、私たちの常識に挑戦し、自己と自己を取り巻く世界の全体を心の表れとみなし、この見方に立って仏と私たち衆生とも一体であると論じます。つまりは、『華厳経』に従えば、他のすべての人びと、あらゆる事物・事象も仏たちさえも、私たち一人ひとりが描き出す画像にほかならない、というわけです。
このような思想は、「自分が存在する、しないにかかわらず、世界は実在する」とか、「仏は私たちを超えた絶対の存在である」といった認識の仕方に慣れた私たちには、なかなか理解できません。しかし、よく反省してみますと、そもそも私たち一人ひとりはみなものの見方・考え方が違い、生き方が違う、ということが事実としてあります。このことは、私たちの心がちょうど鏡のように外界の存在をそのまま映し出しているのではなく、むしろ外界に積極的にはたらきかけ、そのイメージを構成し、それにもとづいて生きている、ということを立証しております。私たち一人ひとりの心が、実は私が生きる世界を一つの図式として組み立て、私たち一人ひとりがその図式にのっとって生きているというわけです。一切のものを心の表れと見る『華厳経』の考え方は、そのような、徹底して自己自身とかかわるものとしての世界のあり方、主体的な世界の成り立ちを明らかにしているのです。
物理学の立場から
以上、お話ししたように、『華厳経』には、私たちがほとんど忘れかけていた重要なものの考え方が全体を貫く基調として流れています。そして近年、先端的な研究を進めている科学や哲学の分野の人たちの中から、こうした考え方に注目し、それを取り込み新しい方向を開こうとする研究者が出てきています。たとえば、いわゆるニュー・サイエンス運動の旗手の一人であり、現在も版を重ねている『タオ自然学』(邦訳、工作舎、一九七九年)の著者であるフリッチョフ・カプラ(Fritjof Capra一九三九−)がいます。かれは、鈴木大拙(だいせつ)博士(一八七〇−一九六六)の『華厳経』理解に強く共鳴し、
『華厳経』の中心テーマは、すべての事物・事象の統一性と相互関連性である。この考え方は、東洋の世界観の本質そのものであるのみならず、現代物理学によって明らかにされつつある世界観の基本的諸要素の一つでもある。
と主張しております。かれがここで述べている現代物理学とは、直接には、同書の後段に細説されるように、G・F・チュー博士が提唱したブーツストラップ(靴ひも)仮説を指すようです。
- 作者: 木村清孝
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- 作者: 江部鴨村
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もし自心を知るは
すなわち
仏心を知るなり
仏心を知るは
すなわち
衆生の心を
知るなり
三心平等なりと
知るを
すなわち大覚と
名づく…
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