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株価は高いのか安いのか、日銀は見解を説明すべきだ|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン

 筆者の記憶を辿ると、いわゆる80年代バブルの立ち上がりの時期である1986年頃に、急騰する株価に対して当時の日銀総裁がやや警戒的なコメントをしたところ、特に証券界から、「株式に関して素人である日銀が株価に口を出すのは余計である」といったニュアンスの批判を受けた。


 証券界としては、せっかく株価が上昇して商売が順調なのに、水を差すとはけしからん、という気分であった。投資家も批判に同調的だったし、当時の大手証券会社は政治家に対する影響力が今よりも大きかったので、政界もこの件に関しては日銀に冷たかった。


 これ以降、日銀は、経済の重要な一部として株式市場を注視しているとしながらも、株価水準に関するコメントは公式には行わないという方針を旨としてきたように見える。

 効果と影響を考えると、イエレン氏の発言は、株式市場及び米経済に対して、FRBの政策のオプションを幅広く確保しながら、懸念される株価上昇のスピード調整を行う点で、なかなか巧妙なコミュニケーションであった。


 同時に、頭が熱くなりがちな株式投資家に対しては、「株価水準は必ずしも安くないのだから、気をつけなさい」というメッセージを届けたのだから親切だ。かつてのグリーンスパン元議長のように、「バブルは、はじけてみるまで、そうとは分からないものだ」と開き直るよりは、何倍も誠実だ。

 現在の企業収益(日経予想)に対して日経平均2万円でのPERは約18倍だ。米国などで経験的に高値圏とされる20倍にはまだ届いていないので、「割高」と断じるほどの水準ではないが、日銀が国債を大量に買い入れていることで低下している長期金利が、将来自然な水準に戻ることを想定すると、必ずしも安いとは言えない。


 そろそろ株価に対する日銀の考え方を説明すべき時期ではないか。株価は、「まだ買ってもいいほど安い」のか、あるいは「もう高いので日銀は将来損をするかもしれないが、それでも買う」のか、株価水準に対して日銀がどう考えているのかは、日銀自身の説明を要する重要な問題だ。


 仮に、株価が高くて、日銀が将来損をする可能性があるとしても、現在株式を買うことが正しいと日銀が考えている可能性もあるが、その場合でも、損が出る前に考え方を整理しておく必要があるだろう。


 株価水準に対する言及は、市場参加者の利害が絡むし、日銀といえども将来の株価予測を正確にできる訳ではないから、コメントしたくない気持ちも分からなくはない。しかし、国民にとっても、日銀自身にとっても重要な問題なのだから堂々と議論する方がいい。


 その場合株価について、「はっきり分かる事」と「よく分からない事」をわけて、さらに「よく分からなくても決めなければならない事」について、率直に説明し、広く議論に応じるべきだろう。「よく分からない事」については、はっきりと「分かりません」と答えるのでも構わない。


 証券界や株式投資家など、日銀が日頃議論を交わす相手とは趣の異なる相手から、質問や批判・反論などが殺到するかもしれないが、日銀にとっても国民にとっても、いい議論になるのではないだろうか。

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