中国政府は、安倍総理大臣を含む各国の首脳を来月3日に北京で開催する「抗日戦争勝利70年」の記念行事に招待していて、ロシアのプーチン大統領や韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領などが出席する意向を示す一方、アメリカのオバマ大統領など欧米の首脳の多くは出席しない見通しとなっています。
これについて、安倍総理大臣は先に、「まだ決めていないが、行事がいわゆる反日的なものではなく融和的な行事になるということが前提ではないか」と述べ、行事の性格を見極めたうえで出席するかどうか判断する考えを示していました。
こうしたなか、安倍総理大臣は、今の国会で最大の焦点の安全保障関連法案をはじめ、重要法案の国会審議の状況などを踏まえて、記念行事を欠席するとともに、これに合わせた中国訪問も見送る意向を固めました。
政府は、こうした意向を、近く、中国側に外交ルートを通じて連絡することにしています。
ただ安倍総理大臣は、中国との間でさまざまな懸案があるなかで、首脳間の対話を継続していく必要があるとして、国連総会やAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議といった、来月以降相次ぐ国際会議の場などを活用し、習近平国家主席との首脳会談を模索していくことにしています。
参議院予算委員会は24日、「内政・外交の諸問題」をテーマに集中審議を行いました。
この中で、公明党の横山前農林水産政務官は、安倍総理大臣が発表した戦後70年にあたっての総理大臣談話について、「各国からどのような評価を得たと感じているのか。また談話の発表をてこに、中国や韓国との首脳会談の実現にどのように取り組んでいくのか」と質問しました。
これに対し、安倍総理大臣は「談話については多数の国々から歓迎または評価するコメントが出されている」と述べ、アメリカ、オーストラリア、フィリピン、インドネシア、イギリスを挙げ、それぞれの政府の反応を紹介しました。
そして、安倍総理大臣は中国の習近平国家主席との首脳会談に関連して、「9月3日に予定されていた中国主催の式典には出席をしないこととした。これは国会の状況等を踏まえて判断したものだ」と述べ、中国政府が来月3日に北京で開く「抗日戦争勝利70年」の記念行事に出席しない考えを示しました。そのうえで、安倍総理大臣は、「中国との間では引き続き、国際会議等の機会を利用し、首脳どうしが率直に話し合う機会を設け、関係のさらなる発展に向け、ともに取り組んでいきたい」と述べました。
また、安倍総理大臣は、韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領との首脳会談について、「3月には日中韓外相会合が開催され、6月には国交正常化50周年の節目に東京で日韓外相会談が行われた。この流れを日中韓サミットの開催につなげ、さらには日韓首脳会談につなげていきたい」と述べました。
維新の党の儀間参議院幹事長代理は、アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡り、政府が1か月間工事を中断し、沖縄県と続けている集中協議について、「どう見ても、1か月の間では出口の見える議論ができるとは思えない。見つからない場合は、さらに協議を続けていくのか」とただしました。
これに対し、菅官房長官は「かなりの距離があるということも事実で出発点は非常に違っているが、そうしたなかで話し合いをしていくことは極めて大事だ。協議は続いており、結果を現時点で示すことは適切ではない。いずれにしろ、沖縄県との協議は、あくまでも1か月という中で集中的に行っていきたい」と述べました。
共産党の山下書記局長は、戦後70年にあたって、安倍総理大臣が総理大臣談話を発表したことに関連して、「日本が中国、アジア太平洋地域に対して行った戦争は侵略だったのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「今回の談話は、『21世紀構想懇談会』の報告書のうえに立って作成したもので、報告書にもあるとおり、なかには侵略と評価される行為もあったと私も思う。具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かは歴史家の議論に委ねるべきだと思うが、重要な点は、いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならないということだ」と述べました。
一方、安倍総理大臣は戦後70年にあたっての総理大臣談話に、「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます」と盛り込んだことについて、社民党の福島副党首が「いわゆる慰安婦の問題も含んでいるのか」と質問したのに対し、「いわゆる慰安婦の方々が辛酸をなめたということについて、『心が痛む思いである』ということは申し上げてきたとおりだ。そうした方々も含め、多くの女性たちが戦争の陰で名誉と尊厳が傷つけられたということを申し上げている」と述べました。