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「同一労働同一賃金」という批判しづらい正論に企業は戦々恐々|Close Up|ダイヤモンド・オンライン

日本では導入が難しいとされてきた「同一労働同一賃金」。突如、安倍政権が目玉政策として、導入に意欲を燃やし始めた。非正規労働者の処遇改善のツールとして利用しようとしているのだ。正社員と非正規労働者格差是正──、まっとうな正論を前に、負担を被る企業は戦々恐々としている。

 具体的には、どのように導入しようとしているのか。


 官邸は、非正規問題の解消のための、つまり正社員と非正規労働者(パートタイム労働者、派遣労働者、有期社員)との格差是正のための“ツール”として、同一労働同一賃金を使おうとしている。


 もともと同一労働同一賃金とは、男女差別をなくす目的で発生した言葉だが、今回は正社員と非正規労働者という雇用形態間の格差をなくすことを目的としている。同じ企業で働く正社員と非正規労働者との間にある、不当な格差が排除される仕組みになる予定だ。


 実は、日本の賃金では、大企業と中小企業との格差、都市と地方との格差も深刻な状況にあり、企業と労働者のミスマッチが一層顕在化している。だが、今回の導入に関しては、「戦線(対象)を広げ過ぎると収拾がつかない。あくまで非正規対策に絞る、というのが官邸のオーダーだ」(政府関係者)。企業規模や地域による格差を置き去りにして、導入にどれほど実効力があるのかは疑問が残る。


 もっとも、正社員と非正規労働者の処遇に大きなギャップがあることも事実ではある。フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の時間当たり賃金を比べると、フランスの89.1%、ドイツの79.3%に対して、日本はわずか56.8%。明らかに日本のパート労働者は冷遇されている。


 その意味で、非正規労働者の待遇を改善すべきという官邸の主張は正論なので、表面上は誰しもが反論しにくい。コストアップが不可避の産業界も、正社員組合を束ねる日本労働組合総連合会も、格差拡大を与党封じ込めの争点にしてきた民主党も、である。

「ちゅうちょなく法改正を進める」という安倍首相の言葉通り、厚労省内閣官房は、法律の整備(労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法改正が有力)を進める。同時に、欧州の裁判事例を参考に、不当な賃金格差をなくすためのガイドラインを制定する。


 最初の関門は5月半ば。1億総活躍プランの一メニューとして、ガイドラインの方向性を示すことになっている。政府関係者によれば「ターゲットは来年の春闘だ。その前に詳細なガイドラインを制定し、法改正に踏み込む」構えだ。


 早くも、企業の人事関係者たちは戦々恐々としている。正社員の賃金を下げずに、非正規労働者の賃金を底上げすることでコストアップを懸念する声も上がるが、「むしろ、非正規労働者に対して賃金・処遇制度に不当な取り扱いがないか説明する物理的作業の方が大変だ」(ある電機メーカー幹部)。


 既存の正社員の賃金を職務給、能力給、業績連動給、手当、福利厚生…などと分解して、正社員と非正規労働者のいずれもが納得するような合理的根拠が求められる。


 しかし、旧態依然とした日本企業では、正社員ですら同じ仕事をしているからといって同じ賃金をもらっているわけではない。非正規労働者への説明責任の義務化が、正社員の賃金制度見直しへ及ぶことにもなるだろう。