それによりますと、昨年度の設備投資の金額は、製造業、非製造業を合わせた大企業全体で、前の年度と比べて9.8%増加する見通しで平成18年度以来9年ぶりの高い伸びとなっています。
また、今年度・平成28年度の設備投資の計画は、大企業全体で昨年度より0.9%減少する計画となっていますが、年度当初は計画を慎重に見積もる企業が多いことから日銀は、設備投資は引き続き堅調だとしています。これは、企業の収益が引き続き高い水準にあるためで、今後の設備投資の動向は企業の収益力が悪化しないかどうかに大きく左右されそうです。
和歌山市に本社を置き、関西を中心に158店舗を展開する食品スーパーは今、今後も地域の成長が期待できる東海地方への出店を強化しようとしています。
これに合わせて、岐阜県におよそ38億円をかけて新たに総菜の生産工場を建設中です。この工場では、東海地方の店舗向けに、地元の消費者の好みにあわせたサラダや弁当、すしなどを生産する計画で、工場の稼働は来年2月となる見込みです。
このスーパーにとって、東海地方への進出の強化は会社としての成長戦略の柱となっていて、日銀のマイナス金利政策による貸出金利の一段の低下も、事業展開の強い追い風になるとしています。「オークワ」の吉田尚三常務は「マイナス金利はわれわれのような企業にとって非常に追い風で、投資のチャンスだ」と話しています。一方で、吉田常務は「建設コストが高騰していることに加えて、来年の消費税率の引き上げによる消費の低迷も懸念される」と話していて、積極的な事業展開を図るこの会社でも、景気の先行きへの懸念が拭えないのが実情です。
日銀の短観では、企業が金融機関から資金を借り入れる際の金利の水準についても調査していて、金利が「上昇」と答えた企業の割合から「低下」と答えた企業の割合を差し引いた値がマイナスになれば、金利が低下傾向にあると受け止める企業が多いことを示しています。
今回の短観では、この値が大企業でマイナス31となり、マイナスの幅は前回、およそ3か月前の調査より26ポイントもの急拡大となりました。これは、日銀がことし2月にマイナス金利政策を導入し、金利全般が低下したためで、中堅・中小企業でも金利の低下を実感する企業は大幅に増え、金利面ではマイナス金利政策の効果が出ていることがうかがえます。
日銀は、企業が低くなった金利で資金を借りて設備投資に資金を振り向け、経済の好循環につながることをねらっていますが、この状況の下で企業が実際、投資を増やす動きに出るのか注目されます。