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セブンにカリスマ退出で生まれる新たな死角|今週もナナメに考えた 鈴木貴博|ダイヤモンド・オンライン

 実際にセブン-イレブンの店舗に10分間滞在して店内の棚を隅から隅まで見てみてほしい。そうすれば読者のみなさまにもセブンの強さが実感できるはずだ。主に食品関連だが、とにかく消費者の観点で「欲しい」と思える商品がこれでもかこれでもかというぐらいに棚に並んでいる。


「欲しい商品」の大半は、セブンプレミアムのロゴが入っている。これは永谷園江崎グリコ、明治、ケンコーマヨネーズなどナショナルブランドと共同開発した商品で、それらのメーカーの強みと言うかおいしいところだけを取り込んだ独自商品となり、それが惣菜、デザート、袋菓子、加工食品とさまざまな棚にぎっしりと陳列されている。


 もし読者のみなさんに余裕があれば、続けて他のコンビニのお店に同じように滞在して棚をながめてみるといい。たとえばローソンに行くと、そこでは似たようにローソン独自開発商品がぎっしりと並んでいる。ところが大きな違いに気づく。そこには「欲しい商品」がないのだ。


ローソンの独自開発商品の特徴は、経済理論にしっかりとのっとっていることである。たとえば格差社会の中で安価な商品が望まれる時代なので、独自開発商品は安さを強調した商品をそろえる。一方で健康に消費者のニーズがあるということでナチュラルローソンの開発商品をそのような消費者に向けてそろえる。ローソンの棚はまるでアメリカでMBA(経営大学院修士号)教育をうけた上司が承認をしたような品ぞろえなのだ。


 それと対比すれば井坂社長が力をいれたセブンプレミアムは理論的な計算で設計された商品ではなく、消費者目線での直感に基づいたアート(芸術)である。スタバよりもおいしいコーヒーなら売れるからと、セブンカフェの豆にこだわる。それまでの外食産業が安いコーヒー豆に抽出促進剤を加えてコーヒー飲み放題で提供したのとは全く真逆の商品発想だった。


 惣菜、弁当、袋菓子とセブン-イレブンとローソンではラインナップは類似しているのだが、最後の最後で消費者が「こっちの方が欲しい」と思うものにこだわる選択眼の部分で、両社にはものすごく大きな溝ができている。ローソンには当分越えることができなさそうな差が生まれてしまっているのだ。

セブン-イレブンなど事業会社のトップには強烈な事業執行のリーダーシップが求められる一方で、セブン&アイのトップには資源配分の資質が強く求められる。中でもホールディングスの社長に一番重要なのは幹部人事を決める資質である。

 この点でも鈴木敏文氏は圧倒的に優れていた。彼は人を見る目に加えて、人を評価するための抜群の仕組みを作り上げていた。それは30年前にビジネスの世界で話題になった「イトーヨーカドー店長会議」以来連綿と続く、幹部社員を一堂に集めて行う教育的会議である。


鈴木氏はかねがね「小売業とは教育業である」と言い続けてきた。イトーヨーカドーの取締役になったときから数えてみても45年間ずっと幹部社員一人ひとりを教育し、評価し、配置し、再評価しという作業を続けてきた人だ。

 その重要な仕事を、これからは監督業に慣れていない井坂氏が担当することになる。赤字に転落したイトーヨーカドーをどうするか?先行きの展開が見えないオムニチャネルをどう立て直すか?ホールディングスのトップになれば、そういった慣れない仕事に井坂氏の多くの時間が割かれることになる。


 その結果、自分がいなくなったセブン-イレブンの強みが弱まり、一方で他の業態も上向かないという虻蜂取らずになるリスクをセブン&アイが抱えることになるというのが、想定される最大の死角だろう。

 さて、セブンはこれからどうなるだろう?競合他社から見れば、コンビニでも、GMSでも、通販でも、一時的に攻略するチャンスが生まれる可能性がある。それはセブンにとって雨降って地固まるまでの一年間ほどの極めて短い死角ではあるのだが、この業界、そこでどちらに転ぶのか興味津々で眺めていきたいと思う。

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