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ブラチスラバで16日開催されたEU27カ国(英国を除く)の首脳会議に向け、メルケル首相は他の26カ国中、実に24カ国の首脳と直接会談した。


彼女は、ワルシャワ、タリン、プラハ、パリ、そしてイタリアのベントテーネ島へと飛び回った。だが、これだけ慎重に協議を重ねたにもかかわらず、「ドイツが自国に都合のいいように議論を進めているわけではない」と各国に示そうという努力は水泡に帰した。


ブラチスラバ首脳会議は大失敗だった。


ブラチスラバ行程表」と称する、いくぶん内容の薄い首脳会議の結論について、フランスのオランド大統領、ホスト国スロバキアのフィツォ首相は一致して「一歩前進」と評した。だが、イタリアのレンツィ首相、ハンガリーのオルバン首相は、インクも乾かぬうちに同宣言を批判し始めた。


メルケル氏が『ブラチスラバ精神』という言葉で何を言いたいのか私には分からない」とレンツィ首相は週末語っている。「事態がこのまま進むなら、私たちはブラチスラバ精神ではなく、欧州の亡霊について語ることになるだろう」


ここ10年近く、欧州の方向性を定めてきたのはメルケル首相だった。ユーロ危機に対するEU対応を策定したのはドイツ政府である。東ウクライナに関するミンスク合意も、難民の欧州流入を制限するEUとトルコの合意についても、ドイツ主導だった。


だがブラチスラバでは、ドイツの国内事情の深刻化が足かせとなり、メルケル首相の外交における影響力が損なわれつつあることが明らかになった。ドイツ国内での逆風は、18日に行われた首都ベルリン特別市(首都と同格)議会選でメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が惨敗したことにも現れている。


「難民危機の余波を受け、欧州内に自分の盟友がそれほどいないことにメルケル首相は気づきつつある」とユーロ危機対応で首相と一緒に働いたことのあるEU元高官は語る。


この元高官は、CDUにもドイツにも欧州にも、メルケル首相に代わる人材はいないという。だがそれでも彼は、ドイツが主導権を握ることへの抵抗は強まる一方だろうと考えている。


メルケル氏といえば、ドイツの財政緊縮と欧州国境の開放が思い浮かぶ。この2つの政策に対する反発からEU全域でポピュリスト政党が活気づき、欧州各国の政府当局者の一部には、そのせいで英国民投票がEU離脱に傾いたのではないかという声さえある。

すでにドイツ政府は経済政策において守勢に立たされている。スペインとポルトガルはEUの定める財政規律を達成できなかったが、これを厳守させる権限がEUにないことを認めざるを得なかったし、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和政策も容認している。


メルケル首相はこの1年間、他のEU加盟国に対して難民割り当てを受け入れるよう働きかけてきたが、これについても敗北を認めている。ブラチスラバでの首脳会議では、難民危機における「柔軟な連帯」という東欧諸国の提案を支持し、これらの諸国が割り当てを免れることに合意したのである。


それにもかかわらず、ハンガリーのオルバン首相はメルケル首相の政策を「自己破壊的でナイーブ」と批判する必要を感じたようだ。


ドイツの影響力が次に試されるのは、ウクライナ危機をめぐる対ロシア制裁に関してEUの団結を保てるかどうかという問題だろう。


シュタインマイヤー独外相が改めて各国を頻繁に訪問しているにもかかわらず、ドイツ当局者は、制裁解除の条件を定めているミンスク合意に代わる方法を考えざるを得ないことを暗に認めている。


「問題は、ミンスク合意をどうやって別の取り決めに転換していくかだ」とある当局者は語る。「関係者にとっては、政治的コストの絡む、ますます厄介な作業になってしまった」


EUは2年前、ロシアがウクライナ領だったクリミア半島を併合し、東ウクライナの反体制派を支援していることに対し、経済・金融面での制裁を科したが、ブラチスラバメルケル氏に抵抗したレンツィ首相とオルバン首相は、EUのなかでもこの対ロ制裁に懐疑的な姿勢をとる代表的な人物だ。


先週末、スロバキアのフィツォ首相は、対ロ制裁は「効果がなく」、EUに悪影響を与えていると述べた。フィツォ首相はロイターとのインタビューのなかで、ウクライナよりもロシアの方がミンスク合意における公約をきちんと履行していると述べている。

もう一つ、メルケル首相とEUにとって試練となるのが、ブラチスラバでもやっかいな問題となったブレグジットだ。


メルケル首相はこれまで英国との緊密な関係を維持するような落とし所を探りたいとしていた。だがこの問題でもやはり、特にフランスからの強い反発に直面している。フランスは、ブレグジットを英国にとってできるだけ厳しい条件にすると誓っている。


独仏両国はこれまで数十年にわたって欧州統合の緊密化を推し進めてきたが、EUが新たな断絶の時代にどのように対処していくのか、この両国の関係がその鍵を握っているのかもしれない。


また、メルケル首相が今後も欧州における政策形成において重要な役割を演じるのか、それとも、これまでより弱く孤立した存在になっていくのかを判断するうえでも、フランスとの関係が手掛りになる可能性がある。


ブラチスラバではメルケル首相に忠実に寄り添っていたオランド仏大統領だが、来春には大統領の職を失うのではないかという予測が広がっている。


オランド大統領に代わって前首相で中道派のアラン・ジュペ氏が次期大統領の座に就くならば、メルケル首相は欧州についてある程度の合意と方向性を取り戻せるという見方もある。


だが、もしフランス大統領選挙の勝者がサルコジ前大統領だとすれば、すべてが白紙に戻る恐れもある。


メルケル首相とサルコジ前大統領が共に自国のトップだった2007年から2012年にかけて、2人は前途多難なスタートを克服し、厳しい難局への対応のなかで徐々に歩み寄っていった。最後には両者の名前をもじって「メルコジ体制」とまで呼ばれるようになった。


だがここ数カ月、難民問題から国家の独自性、対トルコ、対ロシア、ブレグジット、さらには気候変動対策に至るまで、重要な問題の多くに関して、サルコジ氏はメルケル首相と対立する立場を選んでいる。


ドイツ政府上層部のある人物は、「サルコジ氏とのギャップは非常に大きい」と言う。「彼が大統領に選ばれるようなら、メルケル首相に摂っては非常に大きな問題になりかねない」


そうなれば、今回のブラチスラバでの首脳会議は、メルケル首相が欧州を失った瞬間として思い出されるのかもしれない。

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