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【第26回】

 半沢商店を仲介しない百貨店への直接納入先として狙いをさだめたのは、四条河原町にある高島屋京都店だった。


 大阪の難波本店とは違い、まだ鉄筋3階建て地下1階のこじんまりとした店舗ではあったが、百貨店としての格式は十分ある。

 知らない間に、ライバルの青星社が巻き返していたのである。難波の高島屋本店の推薦により、京都店への商品納入を決めていた。

 中川にも後ろめたさがある。翌日、上司で雑貨第2部長の花原愛治に会わせると約束してくれたので、幸一もようやく引き下がった。

 〈塚本社長の第一印象は当時まだ二十七、八才の青年紳士で(筆者注:実際には三十才)彫の深い端正なマスクに目だけが爛々と鋭く光って、ブラジャー、コルセットの将来性と、クローバー印(筆者注:和江商事が当時使っていたマーク)の優秀性を説く口調は熱を帯びて圧倒せんばかりの熱意が感ぜられました。私は話を聞きながら考えていたのですが、この人は同じ商品を扱っても売ってみせるという迫力がある、取引先は既に決まっていて、それを取消すことは出来ないが、或る期間両者を競争させてみて、強い方一社にしぼることにしよう(以下略)〉


 こうして花原部長は思案した揚句、


「では1週間だけテスト販売の期間をさしあげよう」


 と譲歩案を示してくれたのである。


 要するに青星社と販売競争をやってみろというのである。

「だって売り子ってね、私らの時代、水商売みたいなイメージやったんです。だから絶対無理やって言うたんです」

 幸一は後年、文化放送“バッチリ対談”という番組の中で、評論家の草柳大蔵と対談している。そこで草柳から、


「女性操縦のコツというものでもございますか?」


 と問われた際、


「これはね。経営者であっても、ある意味において、女性に好感をもたれるタイプでないと、基本的にはむずかしいと思います」


 と答えている。


 要するに、社長は女性にもてなければならないというのである。

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