アレッポでは、ロシア軍とアサド政権の軍が反政府勢力に対する空爆を続けており、多くの市民が巻き添えになっていて、「シリア人権監視団」によりますと、16日夜から17日にかけて、新たに少なくとも27人の市民が死亡しました。
こうした中、ロシア軍参謀本部のルツコイ作戦総局長は17日、記者会見を開き、今月20日の午前8時から午後4時まで(日本時間午後2時から午後10時まで)8時間にわたって、アサド政権とともにアレッポへのすべての攻撃を停止すると発表しました。そして、市内に残っている市民に加え反政府勢力の戦闘員も退避させるために8つの避難路を設けるとして、反政府勢力に投降を呼びかけました。
アレッポをめぐっては、アサド政権側が病院などの民間施設を攻撃しているとして、欧米各国が戦争犯罪の疑いがあるとして追加制裁も辞さない構えを見せています。このためロシアとしては一時的な停戦を行うことで欧米からの批判をかわすとともに、反政府勢力の戦闘員にも投降を呼びかけることで、アレッポ制圧に向けた今後の軍事作戦を有利に進める狙いがあるものと見られます。
アメリカ国務省のトナー副報道官は17日、「アレッポの人々はこれまでも激しい爆撃にさらされており、最近はさらに激しい攻撃を受けている。停戦を見守るが、率直に言って短すぎ遅すぎる」と述べ、停戦の効果に懐疑的な見方を示しました。
また、EUのモゲリーニ上級代表も17日に開かれたEUの外相会議の後の記者会見で、「一歩前進とは言えるが、国連は現地への支援物資の運搬には12時間は必要だとしており、見解の相違がある」と述べ、懐疑的な姿勢を示したうえで、ロシアやアサド政権に対して直ちに一切の攻撃を中止し国連などによる食糧や医療物資などの搬入を再開させるよう、強く求めました。
ロシア シリア北部アレッポ空爆を前倒しで停止 | NHKニュース
これについて、ロシアのショイグ国防相は18日、モスクワで記者会見を開き、攻撃の中でも空爆については、前倒しして18日午前10時(日本時間18日午後4時)から停止したことを明らかにしました。ショイグ国防相は、空爆の停止を前倒しした理由について、市民と反政府勢力の戦闘員を退避させるための準備が必要だと判断したためだとしています。
アメリカやEU=ヨーロッパ連合は、攻撃を停止する時間が8時間では十分ではないとして、その効果に懐疑的な見方を示していて、ロシアとしては、空爆停止の前倒しを発表することで、こうした懐疑的な見方を払拭(ふっしょく)したい思惑があるものと見られます。