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改正民法は、明治29年の民法制定以来、大きな改正が行われていない債権や契約に関する分野について、120年の間に進んだ情報化や高齢化によって現状にあわなくなっているところを見直すものです。


26日の参議院本会議で、自民・公明両党や共産党日本維新の会などの賛成多数で可決されて、成立しました。


改正民法は、インターネットの通信販売などで企業が不特定多数の契約者に示す「約款」について、今の民法には規定が無くトラブルになるケースもあるとして、契約者の利益を一方的に侵害する内容は無効とする新たな規定を設けています。


また、賃貸住宅の敷金返還のルールを明記し、借り手の故意や過失でできた傷などを回復する費用を除いて敷金は原則として返されるとしています。


さらに、重度の認知症など判断能力の無い人が行った契約などは無効とすることや、消費者が買った商品に欠陥や傷が見つかった場合、売り手に対し損害賠償や契約の解除に加えて商品の修理や代金の減額を求めることができるようになりました。


一方、金融機関などが融資の際に中小企業に求めてきた「連帯保証」について、保証人が想定外の債務を負って自己破産などに追い込まれる事態を防ぐため、その企業の経営者本人などを除いて公証人が直接意思を確認するよう義務づけています。


改正民法は公布から3年以内に施行されます。
金田法務大臣閣議の後の記者会見で、「民法制定以来の社会経済の変化に対応し、国民にわかりやすいものとすることが主な目的だ。国民の日常生活や経済活動に広く影響を与えうるものなので、国民に十分に周知していくことが重要だ。全国各地での説明会の開催や、わかりやすい解説の公表などを検討している」と述べました。

▽約款
暮らしに関わりがある大きな見直しの一つが、企業が不特定多数の契約者に示す「約款」についてです。
「約款」とは、インターネットの通信販売や保険の契約など、同じような取り引きを何度も行う際に用いられる、定型の契約条件ですが、民法には規定がありません。
小さな文字で細かく書かれていたり、インターネットの別のページに記されていたりするケースも多く、ほとんど読まれないのが実情で、トラブルの元になると指摘されていました。
このため、改正民法には、「約款」に基づいて契約することをあらかじめ表示したり、契約者と合意したりしていれば、内容を理解していなくても有効だと明記する一方、契約者を保護するため、利益を一方的に侵害する内容は無効とする規定を新たに設けています。


▽敷金
賃貸住宅の敷金返還についても新たにルールが明記されました。
賃貸が終了し、住宅を引き払う際などには、未払いの賃料や、借り手の故意や過失でできた傷や汚れなどを回復する費用などを差し引いて返還されます。
時計をかけるためにくぎを打った穴など、通常の暮らしをしていて生じる傷や、壁紙の日焼けといった経年変化については、借り主に回復の義務は無いとしています。


▽修理や減額
購入した商品の種類や数が違っていたり、傷があるなど品質に問題があったりした場合に、買い主に認められる対応についても見直しが行われました。
こうしたトラブルの場合、現行の民法で買い主は、損害賠償請求や、契約の解除を行えますが、今回の改正で、品質を回復するための修理の実施や、代金の減額も求めることができるようになります。
政府は、今回の法改正によって、日常の買い物で起きるトラブルを減らしたいとしています。


▽保証人
金融機関などが中小企業に融資する際に求める、いわゆる「連帯保証」についても、新たなルールが設けられます。
実際に融資を受けた人が返済できなくなった場合などに、長年の取引や友人関係などに基づいて連帯保証人になっていた人が、突然、想定外の多額の借金の返済を求められ、生活の破綻に追い込まれる例が後を絶たないからです。
改正民法では、いわゆる「連帯保証」をした人が自己破産などに追い込まれる事態を防ごうと、融資を受けた企業の経営者や、議決権の過半数を持つ大株主などである場合を除いて、公証人が直接、「連帯保証」をする意思を確認するよう求めています。
公証人の意思確認の義務づけという、いわばハードルを一段上げることによって、冷静に検討してもらおうという狙いもあります。


▽職業別時効撤廃
未払い金の支払いについて、職業によって分かれている時効の期間も大きく変化します。現在の民法では、旅館の宿泊料や飲食店の料金のほか、演芸や肉体労働を行う人の報酬についての時効は1年です。一方、弁護士や公証人の報酬、塾や習い事の授業料だと2年、医師や助産師、薬剤師の報酬などは3年となっています。こうしたルールは複雑なうえ、不公平だとして、職業別の規定はすべて廃止され、原則として5年に統一されます。


▽法定利率
利息を支払う約束があるものの特に利率を定めていないときや、損害賠償の金額の算定、それに交通事故で死亡した人の保険金などを計算する際に用いられる、「法定利率」も見直されます。
現在は、年5%ですが、市場の利率が1%を下回っている現状では、不公平感を招くおそれがあるため、改正民法では、年3%に引き下げたうえで、市場の利率と比べて一定の差が出た場合には、3年に1回、見直すとしています。