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阪高裁の福崎伸一郎裁判長(64歳)が、次々と一審判決を覆し、「逆転無罪」の判決を連発しているのだ。

福崎は、かつてエリート裁判官の一人だった。東大法学部を卒業後、優秀な成績で司法試験に合格し、'79年に任官。名古屋地裁からスタートし、刑事の裁判官としてキャリアを伸ばした。


'98年に東京高裁判事になり、担当したのが「ロス疑惑」の控訴審だ。


「一審で無期懲役だったところ、逆転無罪の判決を出しました。三浦和義氏が犯人であるという世論に逆らって、無罪判決を出すのは勇気のいることです。このときに左陪席判事を務めたのが福崎さんです。彼の裁判官人生に影響を与えたのではないか」(元裁判官)


その後、同期裁判官でも数人しかなれない、エリートコースのひとつ、最高裁の調査官も4年間務めた。東京地裁の裁判長になったのが53歳のときのことだ。妻と娘2人の4人家族、趣味はウォーキング。周囲の評判はすこぶるいい。


「人柄のバランスのとれた方です。生真面目で、冗談を言うタイプではないし、淡々と仕事をこなすが、自分の意見はきちんと持っている」(東京地裁時代の同僚裁判官)


「非常に誠実で、常識的な性格。理論的な判決文を執筆していく裁判官です」(最高裁の元調査官)


ただし、福崎の出世はここで頭打ちになる。宮崎地裁の所長、福岡高裁の裁判長を歴任したものの、「裁判官としては可もなく不可もなくというキャリア」(元裁判官)だ。


転機になったのが、'15年12月に大阪高裁の部総括(裁判長)に63歳で就任したことだ。


「年齢を考えると『上がり』のポストですね。'17年の7月に定年の65歳を迎えますから、裁判官としての最後の職場になるでしょう」(同)


定年前、最後の1年半、俺はどう生きるか。淡々とつつがなく過ごすか、熟練裁判官として、最後の賭けに出るか――。


福崎の選んだ道は後者だった。福崎が無罪判決を出した刑務官母子殺害事件の弁護人は言う。


福岡高裁の裁判長時代は、丁寧な裁判をしている印象はなかったんですね。大阪に来てから急に変わったように感じます。私の担当した事件ではDNA鑑定を重要視し、検察側のこじつけた証拠を排除した。フェアな訴訟指揮でした。


しかし、ときに逆転有罪も出し、気が抜けない裁判長です」


64歳の福崎はラストスパートをかけている。

「福崎さんは、『一審の判決と量刑が法に合致しているか、徹底して証拠を吟味しないといけない。被告にこの判断なら仕方がないと思ってもらえる判決を』と常々話しています。


逆転判決を出す裁判官には自信家が多いなか、公訴棄却のときでも『あれでよかったのかな』と判決を謙虚に振り返っていました」(同)