今年の予備論文憲法は、どの部分が司法審査の対象となるかという点を正しく理解しておかないと、何を論ずべきかがわかりにくいところがあるので、簡単に整理しておきましょう。まず、部分社会の法理との関係では、訴訟物に着目して判断する(共産党袴田事件判例)ことに注意が必要です。
— studyweb5 (@studyweb5) 2018年8月14日
本問では、処分2の取消訴訟だけが提起されているので、処分1は訴訟物に含まれていません。そして、処分2は除名なので、判例によれば、部分社会の法理の適用はない。法律上の争訟性について答案に書く内容としては、ここまでで十分です。ただ、本来は、部分社会の法理よりも一般的な問題があります。
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一般に、法令の適用による終局的解決に適さない事項が訴訟の核心的争点となっているような場合には、法令の適用による終局的解決ができないものとして、法律上の争訟性を欠くとされます(板まんだら事件、蓮華寺事件各判例参照)。
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他方で、訴訟の主要な争点が手続の遵守に関するものであるなど、法適用に適さない事項に対する実体的判断をすることなく訴訟物に対する判断をすることができる場合には、その限りにおいて法令の適用による終局的解決が可能であるとされるのです(本門寺事件、共産党袴田事件各判例参照)。
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宗教団体関係訴訟で部分社会の法理を適用した判例がないのは、住職の地位等が訴訟物なら板まんだら事件の法理で却下され、不動産引渡請求等なら一般市民法秩序と直接関係する訴訟物なので、結局部分社会の法理を適用すべき場面が生じないからです(種徳寺事件判例参照)。
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さて、本問では、「所定の手続を経た上で」とされているので、手続遵守は争点となり得ません。核心的争点となっているのは、各処分の憲法適合性です。これは、裁判所の法適用による終局的解決に適さない事項といえるでしょうか。
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懲罰事由該当性や、処分選択の妥当性については議会の内部規律の問題であり、裁判所が介入して解決するには適さない事項であるといえるでしょう。しかし、議会の内部規律に属するとはいえない部分があります。それは、選択できる懲罰のメニューです。
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地自法135条1項は4つの懲罰だけを定めています。議会が自主的な判断によってこれ以外の懲罰を科した場合には、それは違法であり、司法審査に服することは争いがないでしょう。議会の自主的権能の根拠は地自法にある以上、その枠を超えることはできないからです。
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そして、地自法は憲法の下にある以上、地自法の定める懲罰は、合憲的なものであることが前提となります。そうすると、地自法135条1項の定める懲罰であっても、憲法に違反するような方法、態様で科すことを地自法は認めておらず、その点については司法審査が及ぶことになるのです。
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そうすると、本問で、処分1が地自法135条1項2号の「陳謝」に当たるというためには、憲法に違反する方法、態様であってはならず、その点については司法審査が及ぶ。だから、この点について実体的な検討、すなわち、合憲性判断をする必要があるのです。
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他方、処分2は除名なので、方法、態様のバリエーションは存在しません。この点は、注意を要します。処分内容が一義的に定まる以上、処分2が違憲となるとすれば、それは除名を認めた地自法135条1項4号自体が違憲であることを意味することになるからです。
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そうすると、地自法135条1項4号自体が違憲であるはずはない、ということになるのですが、問題はその理由付けです。出席議員の4分の3以上の同意によって除名されることは地自法の定めたルールなのだから、違憲の問題は生じないというルール論は、1つの考え得る解答でしょう。
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もっとも、本問で問題にされている21条との関係では、そもそも議員の地位を保持することが21条の保護範囲に含まれるのか、ということの方が、より適切な検討であるように思います。府中市政治倫理条例事件と本問の事案を対比できるからです。結論としては、保護範囲に含まれないとすべきでしょう。
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要は、「(民事責任の成否はともかく政治責任としては)虚偽の発言をした以上、議会人として陳謝すべきで、それを公然と無視して議会秩序を乱すのは除名相当だ。」とする議会の判断を裁判所が云々してはならないが、地自法135条1項が許さない懲罰をしたかは司法審査の対象となるということです。
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以上の理解によれば、民事責任の成否や比例原則は懲罰事由該当性の判断ないし処分選択の妥当性に係る要素なので、解答の対象とはならない。したがって、夕刊和歌山時事事件判例の故意阻却や配信サービスの抗弁、病院長自殺事件判例の規範などは問題にならないということになるのです。
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なお、本問と類似の事例で名古屋高判平25・7・4がありますが、事前に誰も知らないでしょうし、法律上の争訟性や司法審査の範囲の問題としてではなく、素朴な裁量論から実体的判断をして取消しを認めていますので、本問でこれをそのまま参照して解答することはできないのではないかと思います。
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