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高級魚として知られるフグは、かつては九州や中国地方での漁獲が多く、主に西日本を中心に消費されてきましたが、温暖化により生息域が北上し、東北地方や北海道など、これまであまり食べられず調理できる人が少なかった地域でも、食材として使われるようになりました。


また、生息域が変わることで違う種類のフグどうしの交配も進み、取り除くべき毒のありかや強さがわかりにくくもなっているということです。


このため、フグの料理店で作る団体や卸売業者の団体などが21日、東京 築地で会合を開き、現在、都道府県によって与えられ、場所によって厳格さが大きく異なる調理の資格を、安全のため国が一括して与えるよう変更を求める決議をしました。


決議では、フグの種類の鑑別方法をより厳しくし、それぞれのフグの生息状況などの情報共有を、国が強化することも求めています。


これらの団体は22日午後、厚生労働省を訪れ、要望書を手渡すことにしています。


要望を行う「ふぐサミット2018」の代表を務める亀井一洋さんは「フグの産地や生態がめまぐるしく変わる中、事故を防ぐため早急な対策が必要だ」と話しています。

フグはもともと、熱帯から温帯にかけての海に生息する魚ですが、温暖化や海流の変化に伴って生息域が急速に北上していて、漁獲の中心も、九州、中国地方から、北海道、東北地方へと変化しています。


このうち九州では、長崎県や福岡県で漁獲が多く、平成18年には1449トンの水揚げがありましたが、おととし、平成28年には、726トンほどにまで減少しました。


その要因としては、温暖化による生息域の変化のほか乱獲による影響が指摘されていて、九州や中国地方でとれたフグが水揚げされる山口県下関市の南風泊漁港では、平成28年までの10年間に水揚げの量が半分以下に減りました。


一方、北日本では、かつてほとんど漁獲がなかった北海道で水揚げが急増し、平成18年には東北地方と北海道を合わせて524トンだったのが、平成28年には1215トンと倍以上に増え、初めて九州の漁獲量を上回りました。


水揚げが増えている青森県では、フグ祭りが開催されるようになったり、地元の商工会議所がフグのブランド化に取り組み始めたりするなど、地域起こしにも活用され始めています。


フグの生態に詳しい水産大学校高橋洋准教授は、「短期間に急速に生息域が北上していて、種類によっては、北海道が最大の産地になったようだ。また、日本海は、温暖化に伴う水温上昇が顕著で生息域の変化も大きい」と話しています。

温暖化によって、フグの生息域が変わったため、違う種類のフグどうしの交配も進んでいて、専門家は取り除くべき毒の在りかや強さもわかりにくくなっていると指摘しています。


高橋洋准教授らの研究グループは、種類がわからないフグの水揚げが増えているという漁業者などからの情報を受け、平成24年から26年にかけて、岩手県福島県、それに、茨城県沖で取れたフグを調査しました。


調査の過程で、「ショウサイフグ」と「ゴマフグ」と見られるフグ、それに「種類不明のフグ」の合わせて50匹ほどをDNA検査したところ、40%近くが「ショウサイフグ」と「ゴマフグ」の交雑種で、通常は1%ほどにとどまるはずの交雑が、大規模に発生していることを突き止めました。


交雑が進んだ原因として、もともと日本海側にだけ生息していた「ゴマフグ」が、温暖化で津軽海峡を通って太平洋側にたどり着き、東日本沿岸の「ショウサイフグ」と交雑していると考えられるということです。


また、日本海には、「ゴマフグ」と「トラフグ」、それに「マフグ」の特徴を持った種類不明のフグが増えているということです。


フグは、種類によって毒がある場所や毒の強さが異なっていて、例えばトラフグの皮は食べられる一方、マフグやゴマフグの皮には毒があり、食用にすることができません。


高橋准教授は「交雑は今後、フグの生息域の変化とともに、より一層増えるものと見られ、どこにどの程度の毒があるかがわからず、リスクが増している。確実に見つけたり排除したりする手法を急いで開発する必要がある」と話しています。

フグの産地の北上や、交雑したフグの増加といった変化は、東京の築地市場でも現れていて、卸売業者や東京都が対応を進めています。


築地市場には全国から魚が集まりますが、フグは最近、北海道や東北で水揚げされたものが増えていて、交雑による種類が不明なフグについては、安全のため、直ちに廃棄しているということです。


築地市場では、フグを扱う卸売業者も都の条例でフグの調理資格の取得が義務づけられていて、長年取り扱ってきた仲卸業者の小栗健二さんは「模様が違ったり色が違ったり、今まで取れてこなかったフグが取れているおかしな状況だ。交雑種の研究を進めてもらい、情報を共有してほしい」と話していました。


また、築地市場で食品の衛生を管理する東京都市場衛生検査所も、毎日2回行っている市場の監視活動でフグの監視も続けていて、卸売業者の生けすや店先で見つけたり、卸売業者から提供を受けたりして交雑種が消費者に流通しないよう対策を取っています。


京都市場衛生検査所の高木達也統括課長代理は「ここ数年、築地でもこれまで見られなかったフグが見つかっている。安全性のわからない交雑種が築地市場を通り過ぎてしまうと影響が大きいので、卸売業者には選別を十分にやっていただくようにお願いするとともに、しっかりと監視して食の安全を守りたい」と話しています。