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ポリシー・ウォッチ
竹中平蔵

産経新聞朝刊)
【竹中平蔵 ポリシー・ウオッチ】“大きな誤り”の始まり

しかし今回の北京オリンピックには、従来以上に国威発揚を目指す姿が感じられる。もちろんこれを契機に、中国が国際社会の責任ある一員としての立場を確立すれば、それは世界全体の利益につながる。そのようなプロセスが実現することこそを期待したい。

 しかしオリンピックという「宴」の背後で、中国社会は大きく揺らいでいる。テロの発生という政治的混乱に加え、経済にも変化が生じている。

中国の長期的な発展力は間違いなく大きい。それを発揮してもらうことは、われわれの利益でもある。しかし中国社会が抱える経済的自由と政治的不自由という大きな矛盾が、次第に蓄積されつつある。その社会的不満を打ち消すために成長を続けなければならないという宿命のなかで、経済にはバブル的な要素が生まれてきた。

 1990年代の日本経済は、政策の大きな方向を誤ったがゆえに「失われた10年」を経験した。当時、グローバル化する経済に対応して経済の仕組みを根本的に組み替える「構造改革」が必要であったにもかかわらず、2つの誤った政策が採られた。1つは、公共投資など政府による財政支出を拡大するという偏ったマクロ政策だ。10年間の追加経済対策は130兆円、GDPの26%に達した。にもかかわらず、平均成長率は1%だったのである。もう1つの誤った方向は、ある時点からやみくもに財政再建に走ったことだ。平成9年の消費税引き上げをきっかけに、日本経済は危機的な状況を経験した。

 財政拡大(ばらまき)派と再建至上(増税)派は相対立するようで、構造改革に反対ないしは不熱心という点では共通している。

こうした的外れな発言の中に、政策の根本的な方向を誤った90年代の政府の姿が重なるのである。

まずは、交易条件の悪化という事実の前で、国民に堂々と痛みを求めるリーダーの声こそが必要だ。