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『職業としての政治』
P83

ある男性の愛情がA女からB女に移った時、件の男性が、A女は自分の愛情に値しなかった、彼女は自分を失望させたとか、その他、似たような「理由」をいろいろ挙げてひそかに自己弁護したくなるといったケースは珍しくない。彼がA女を愛していず、A女がそれを耐え忍ばねばならぬ、というのは確かにありのままの運命である。ところがその男がこのような運命に加えて、卑怯にもこれを「正当性」で上塗りし、自分の正しさを主張したり、彼女に現実の不幸だけでなくその不幸の責任まで転嫁しようとするのは、騎士道精神に反する。