宮田秀明の「経営の設計学」トップダウンとボトムアップの共存を考える
色々なビジネスに共通することも少なくないのだが、それぞれのビジネス特有の難しさもある。だから、現実の経営データの分析は不可欠だ。
こんな産学連携の現場重視型の研究開発を行っていて最後にぶつかる壁は、対象企業や対象ビジネスの組織と実務者の壁である。新しいモデルやビジネスがシステム的に優れていたとしても、企業がこれを活かす組織、これを活かす社員に変化してくれなければ最終的な効果は出ない。しかし残念ながら、実際には、現在の組織やビジネスプロセスを変化させないままで、新しいビジネスを実行しようとしたり、ひどい場合は変化に抵抗する動きが出て来たりすることも少なくない。
変革を実行して実現させることは難しい。抵抗勢力は至る所に発生するのだ。ちょっと気を緩めれば変革のリーダー役の人の中にさえ抵抗勢力が発生しかねない。
新しいビジネスモデルを実行したり新しいサービスを開始したりする時には、そのモデルの論理的合理性や斬新さが必要なのだが、同時に、それを実行するための組織マネジメントの方法とそれを実行するエネルギーが重要である。
組織マネジメント力がなければ、変革を実現することは難しい。組織マネジメントが大変難しいのは、人という一番難しいものを経営することだからだ。
トップダウンの経営を行える人は多いが、ボトムアップのムーブメントを起こせる人は少ない。大きな構想力と大きな人間力が要るからだ。
首長と職員の子供っぽい対立はリーダーのマネジメント力の低さを示しているが、このような経営が多いと、日本の行政の経営力の低さが、国民の作り出した価値を減損することになってしまう。
問題はこの改革を形だけでなく実質的に成功させることができるかどうかだった。名前や形や組織は変わっても、中身が昔のままでは意味がない。
若手の教員にこの4つのコースのデザインを自律的に行うよう依頼したのだ。しかも、4つのコースのデザイン・プロジェクトは相互に競争させるようにした。