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〈連載―世界変動〉印ロの野心 もろい基盤

昨年12月、石油輸出国機構(OPEC)の総会が開かれた。テーマは原油価格の暴落への対応。厳重な警備の中、注目を一身に集めたのは、ロシアのセーチン副首相だった。

「米国の原油相場に振り回されるのはおかしい。自国通貨建ての取引にすれば価格が安定し、産油国だけでなく消費者にも利益は大きい」

 エネルギー政策を足がかりにした独自の「経済同盟」づくり。その動きは、最近のロシア外交を貫く。

 メドベージェフ大統領は11月下旬から、中南米やインドなど10カ国以上の首脳と会談。油田開発や原子力などで協力協定を結んだ。12月23日には15カ国からなる「ガス版OPEC」を立ち上げた。

 イデオロギーと軍事力を軸に共産主義陣営の拡大を目指したソ連は91年に崩壊。ロシアは米国の資本主義を手本に急進的な改革を進めたが、新興財閥が富を独占。98年には金融危機で国民生活が混乱した。しかも、東欧諸国ばかりか旧ソ連ウクライナグルジアも西欧になびいた。

 転機は00年のプーチン大統領(現首相)の就任だ。原油高を追い風に経済は07年までの5年間、毎年6%以上伸びた。モスクワでは高層ビルが立ち並び、高級車が飛ぶように売れた。外貨準備高は約4500億ドル(約42兆円)で中国、日本に次ぐ世界3位。軍事力も保つ。

     ◇

 「G7では、もはや今日の課題を解決できない。経済的な変化を反映した新しい枠組みが必要だ」

 金融危機を受け昨年11月にワシントンで開かれた金融サミット(G20)で、インドのシン首相はこう発言した。戦後の国際金融をになってきた欧米中心の国際通貨体制も、打破すべきだと訴えた。

突出した発言を重ねるのは「先進国が危機をのりこえ、成長するためには、われわれ11億人の潜在的な需要が欠かせない」(ネルー大のマノジ・パント教授)と自覚しているためでもある。

「インドは身の丈にあった、ふさわしい位置を与えられようとしているだけだ」

「歴史の必然」

「民主主義国家のインドは、いずれ米国の最大のパートナーになる」

「良き友人とは、適切なアドバイスもできる存在なのだ」

「長年、植民地にされたインドには、独立国として自らの利益を追求したいという気持ちが人一倍強い」

 ロシアでは、昨夏のグルジア紛争などで投資家が離れ、株価は5月の高値から7割も下げた。日米欧の主要国をしのぐ急落は、原油価格の跳ね上がりが暴落に転じたことも反映している。資源頼みの成長の半面で、他の産業や金融の基盤づくりが遅れていたツケともいえる。

 インド経済も「米国依存」が浮き彫りになってきた。

 マネーの逆流で株価が下落。それが消費、投資に影を落とす。海外の資金による道路などのインフラ整備も遅れが目立ちだした。政府は、数千億円の景気刺激策を立て続けに打ち出したが、財政余力は限られ、中国のように巨額を投じるのは難しそうだ。

英国のブレア前首相が訴えた。

 「貿易交渉も金融危機対策も、インドなくしては解決できない。ただ、権利と責任は一体であることを忘れないでほしい」。権利を主張するだけで、解決策は米国に聞いてくれというような態度はもう許されない、との苦言だった。