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知らないことは恥ずかしい?

 記者にとって取材先での最大のリスクは、事実誤認である。取材しているときの筆者は、自身が理解できたかできなかったかをずっと考えながら、話を聞き、質問をして、その反応を注意深く見守り、ノートに書く。

 それでも自分の理解があやういと感じるときはたくさんある。こんなとき、取材相手が話してくれたことを、自らの言い方で置き換えてみる。抽象度を上げたり下げたり、話の順番を逆にしたり、主語を取り替えたり。やりかたはいくつかあるが、とにかく聞いたことを言い換えて、自らの理解が取材先の認識と一致しているかを確かめている。しばらく取材を続けていると、この言い換えの意識が、適切な主語を選び、よりわかりやすい順番で、具体的な方向に向いてくることがわかった。

 特に効くのは具体性だ。話題、相手、自分の知識に合わせて適切なレベルの技術用語を選ぶと、精細なディテールを聞けるようになる。

 「知識」が足りない自分に対する正直さが、自分を助けてくれる。そして、その正直さを持ち続けるだけで、不思議と“知らないことの恥ずかしさ”が消えるように思える。

 いつしか、自分がかつてした仕事が、のちにその読者の役に立ったことを知る機会も得た。

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