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理念を全社員に説き続けて過去最高益 不況下の増益企業スペシャル第1回〜ワタミ(前編)

 1つは介護事業が成長しているためです。

 そうです。実際にウエーティングリストがたくさんあります。そういう面から言えば、不景気は不景気なんだけれども、需給バランスが崩れている市場があることが分かります。

 この介護の宅食についても、とにかく需給バランスが崩れています。

 ただ、これからについて言えば、目の前にあるお金を増やしていく、例えば投資効率をどんどん上げていくというよりも、やっぱり地道にこつこつと仕事をしていくような時代になるでしょう。これからは我々みたいな会社が必要とされるし、評価されると思います。

 我々はいつも人気のない仕事ばっかりやっていて、労働集約性がすごく高いわけです。外食も、介護も、メンテナンスも、農業も人気がない。でも、我々はそこにおいての1つの価値観を持っていたんです。仕事というのはお金を儲けることだけじゃない、それより大事なことってあるじゃないか、と。こつこつ仕事をしながら、人が嫌がることもやりながら、ありがとうと言われて自分が成長することが、仕事の本質じゃないか、と。お金は二の次だろうと25年間考えてきたことで、たぶん時代が今そしてこれから、こちちの価値観に大きく動こうとしているのだろうと感じます。

 その理由は、変わり続けているからです。不景気などの外圧じゃなくて、内圧的エネルギーで変わり続けてきたんです。それは何かというと、ありがとうなんですよね。つまりお客様からもっと喜んでいただくためには何ができるかというのを、現状否定をしながら常に変え続けてきたわけです。

変わろうとする欲のもとは、もっと売り上げを増やそうでなくて、もっとお客様に喜んでいただくのはどうしたらいいのか、でした。

 答えとしては、売り上げとか利益を求めていたら、もう十分だった、と。もし店頭公開が目的だったら、店頭公開で勢いが止まっている。もし名誉というものが目的だったとしたら、小説の主人公になったらそれで十分だよねとか、そうじゃなかったことを、いろいろな例を交えて話します。

 年功序列はダメでしょうね。同一作業、同一賃金というところは守らなきゃいかんでしょうね。そうしないと労働意欲がわかないです。

本当に現場が好きでなければリーダーにはなれない 不況下の増益企業スペシャル第1回〜ワタミ(後編)

だけれども本当に好きなのが現場じゃないとね。頭じゃなくて経験でもない「好き嫌い」というところに最後は行き着くのです。

 だから、ワタミがなぜ伸びてきたかというと、お客様の笑顔が好きだったから、どうしてもこうありたかったからというのが、実は最後の理由であり、そこが根幹です。

 米国的なマニュアル文化だけではサービス業はダメなんです。おもてなしの心がないといけない。相手を思う心、相手の立場で1つのサービスを決めていく能力は、日本人が非常に高いと思っています。


 だからその日本人の心のサービスと、私たちが提携している米T.G.I.フライデーズという世界最高峰のレストランビジネスのモデル、つまり科学とを合わせる。そうして日本独自の業態モデルとして海外に持ち込んだ場合には、圧勝できると思いますね。

 介護や宅食は今後も伸びていくと思っています。ワタミというグループは結局、その根っこは全部こつこつやっていこうということにあります。

 要するに「ありがとう」を集めて、自分が成長したいと思うやつだけ集まりなさいと言ってきました。世の中は、お金なんかどうでもいいんだよ、と。なきゃ困るけれども、お金より大事なことがあるんだよ、それを俺たちみんなでつくっていこうというメッセージは、25年間変えていません。

―― 誘惑というか、ここでちょっと小さなうそをつけば、今の急場がしのげるという局面が当然あるわけでしょう。


 いっぱいありました。ただ、その誘惑を振り切るのに、僕はそんなに強い意志を持ってやったわけじゃなくて、それが当たり前だと思っています。そこにおいて一番大事なのは、人の目というか、外部からの目を一切気にしないことだと思うんです。


 僕は一切気にしないんです。やっていることは神様がちゃんと見ているから、何も関係ない。だからその時に評価されようがされまいが、そんなことは知ったこっちゃない。そのスタンスがあれば、例えば今回は減益だよと堂々と僕は言うし、株主に対しても何でも言います。いい時はいい、悪い時は悪い、と。

最近、私が100年、100年とよく言っているのは、時間軸を長く持ったら大事なことが見えてくるからです。短い時間軸で見るから、損だ得だとかここでうそをついたなとか思うかもしれない。長い時間軸で見たら、今は黒字だって赤字だって、つぶれなきゃ大したことじゃないと思います。