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【正論】社会学者・加藤秀俊 暗黒の「紙芝居」教育はご免だ

 わたしはけっしていい教師ではなかったが、それでも教授時代には学生たちの顔をみながら講義をすすめた。内容がむずかしそうならやさしい事例で説明する。それでもダメならちょっと脇道にそれて注意をひきつけたりしてあれこれくふうしていた。

 ところがいまどきのスライド授業は暗黒のなかでの一方的なオハナシである。なによりも教授諸公はじぶんの手元のコンピューター操作にいそがしく、予定のスライドを順序よく映写することに専念なさっているから背後のスクリーンばっかりみていて学生の反応なんかみているヒマがない。

 このごろのお医者さまのなかにも電子カルテになってからコンピューター画面ばかりみていて、いっこうに患者の顔色さえみてくださらないかたがおられるという。それとおなじ情景である。

 むかしは、先生がチョークで黒板に文字や数式をお書きになるのをお手本にして、じぶんもあんなふうにじょうずに字を書けるようになりたい。そうおもってこどもたちは育ってきた。それなのに電子黒板は手書き文字を活字体に変換させて文字の個性を抹殺し、またクイズ仕立ての画面で勉強させようとする。