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重要なのは事業仕分け後。 鳩山政権は「やるべき政策」を決めよ | 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人 | ダイヤモンド・オンライン

 今回は、鳩山政権の予算編成過程を小泉政権1年目の財政改革と比較する。

 小泉政権1年目は、「新規国債発行額30兆円以内」という政権公約達成のために、3兆円の予算削減を目指した。経済財政諮問会議において、小泉純一郎首相(当時)は5兆円の予算削減を行い、2兆円をIT、環境などを重点分野として新規に予算配分することで、3兆円の予算削減を達成すると決断した。


「概算要求」では、重点分野を別枠として各省庁から募集し、その一方で通常の予算は前年度並みを概算要求基準とした。そして、12月の「政府原案」閣議決定までに5兆円の削減に取り組むこととなった。

 鳩山政権の予算編成は、概算要求基準を撤廃し、各省庁で大臣が予算の総枠に捉われず査定することを目指したが、95兆円と史上最高額の概算要求となった。


 しかし、「子ども手当て」など民主党政権公約マニフェスト)分の7兆円を除くと、通常予算分は昨年度当初予算並み(88.9兆円)である。マニフェスト分には、既に執行停止した今年度補正予算約3兆円が充てられ、「政府原案」決定までに約4兆円の削減が必要となる。

 小泉政権との比較では、年末までの削減目標額の差が1兆円で、実は大きな違いはない。

 小泉政権では重点分野以外では前年度並みを各省庁の要求基準の上限としていたので、各省庁は基準以下に要求を抑えるために、さまざまな要求事案に優先順位を付けた。その上で、財務省主計局は内閣府・各省庁の審議会や政府与党の協議会等が決定した予算編成の基準を盾に、強い姿勢で各省庁族議員、業界団体などと交渉した。

その反面、概算要求後の財務省と各省庁の間に族議員や業界が複雑に絡む個別案件の決定過程にはほとんど関与できなかった。

そして、その結果自民党政権下では各省庁、族議員、業界団体の既得権益が守られてきたと鳩山政権は批判する。

 この既得権益を打ち破るには、予算総額の抑制だけでなく、個別予算の編成過程に切り込む必要があるというのが、事業仕分けを断行した理由である。

 前述の通り、これまで財務省は各審議会が示す指針に従って予算を査定してきた。しかし、鳩山政権は予算査定の基本方針を示してきた経済財政諮問会議」を廃止し、各省庁のほとんどの審議会の議論を停止させた。審議会が、官僚や旧自民党政権の強い影響下にあるのが理由だ。

鳩山政権は、政治判断が必要な事業は「事業仕分け」になじまないとしてこれを拒否した。

だが、政権を担うならば、やるべき政策がなにかも決めなければならない。

そもそも予算編成の指針は、新設の「国家戦略会議」で決めるべきものだったが、まだ機能していない状況である。

 この連載では「国家戦略会議」について、1年くらい議論してから設置すべきと主張した(第32回)。マニフェスト以外の各省庁の政策についても、1年ぐらい議論して方針を決めるべきではないか。

 更に、鳩山政権がマニフェストの新規政策の見直しに着手したのも間違いだ。小泉政権1年目の予算過程では、5兆円削減と2兆円の重点分野配分を決断し、ブレなかったことで公約を達成した。鳩山政権もマニフェストに徹底的に拘ることで、各省庁に対して通常予算の削減に強い圧力を掛けるべきだ。

 鳩山政権は、1年目に「できること」と「できないこと」を国民に丁寧に説明すべきだ。1年目にできるのはマニフェストの実現と、無駄の削減だけである。

 民主党の政治文化とは(第25回)、上手くいかないことも公開し、政治の実情を国民に正直に伝えることのはずだ。