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宮田秀明 国家戦略室の環境戦略とは?

他の先進事例の紹介や後追いだけでは戦略にならない。

 戦略性のない日本の行政はこの30年ほど続いていると思う。1980年以降ということだ。

価値観の変化とともに、社会は複雑化して非線形(nonlinearity)性を高めてきた。

 こんな時こそ「戦略性」を、そして「長期的な視点からの国家戦略」を取り戻すことが必要なのだ。

国家戦略室の使命は、よく現場を理解して、ビジョンを実現するためのコンセプトやモデルを作り、それを具体的に設計することである。

 どうしてこうなったのかわからないが、日本では、このようなコンセプトやモデルを創造できる人材がいつの間にかいなくなった。シンクタンクを標榜する企業は政府の下請け業務に注力し、税金をもらって経営して、本来のシンクタンクとしての能力を喪失してしまっていると言っても過言ではないだろう。

 日本のシンクタンクも、1990年比で「CO2排出を25%削減」に対する検討を行っていないわけではない。しかし、それらは全体的な数量を四則演算しただけのものだ。風力発電を現状の9倍にすべきだといった説明である。実現のためのシナリオや必要なモデル作りが最も大切なのだが、その説明がないままに四則演算の結果のようなものしか示されない。25%削減した時の家計負担額の予測のバラツキが大きい理由も同じことだ。

 日本のブレーンが弱体であることが、国の競争力にとっても、環境問題の実現にとっても、民主党政権を生かすためにも、大きな障害になりそうだ。

 環境問題だけに絞るならば、「CO2、25%削減」のためのシナリオとモデルは部門ごとに策定して、具体的なモデルを提示しなければならない。

 しかし、欧米の環境モデルがすべていいとは限らない。一番真似をしないほうがいいのが、スマートグリッド(次世代送電網)のシステムだ。

 国家的な環境プロジェクトで電力事業者のビジネスに最大の影響を与えるのは売電量の減少だが、その次は、他の事業者や一般家庭で自然エネルギー発電される電気の消費者から電力事業者への「逆潮流」の電力供給による電気の品質低下と経営の複雑さである。

 電力システムの中で「CO2、25%削減」に貢献するためのシナリオは3つあると思う。

二次電池の利用がポイントである。

1万台の電気自動車(EV)の出力は大型の原発の出力と同じくらいだ。2012年に日産のEVが50万台売られたら、その電池の出力は50基の大型原発が稼働するのと同じ規模になるので、この規模の二次電池が定置型として使われると、経済と産業と環境に変革を与えることになり得る。

 日本が「CO2、25%削減」に成功するとしたら、その命運は、実はリチウムイオン電池とそれを経営する情報システムが握っているかもしれないのだ。