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「小沢支配」の指摘は的はずれ 小沢氏が目指す国会制度の健全化 | 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人 | ダイヤモンド・オンライン

 自民党政権下の与党事前審査では、族議員や様々な業界団体が利益獲得を求めて跋扈した。一方で首相など閣僚はほとんどこの過程に関与できず、内閣よりも党が実質的に政策決定権を持ち、政府・与党の政策決定が二元化していた。また、与党事前審査を経て国会に提出された法案には党議拘束が掛けられる。その結果、与党は国会で法案の修正ができず、国会審議が形骸化していた。

 鳩山政権では、与党事前審査の代わりに、副大臣が主催し、与党議員と意見交換する「各省政策会議」を開催する。この会議は政府の公式な会議であり、意見交換の結果は議事録要旨の公開により透明性が確保される。自民党の与党事前審査が非公式であり、その内容が非公開だったのと大きな違いだ。

 また、重要なのは、「各省政策会議」が業界団体等からの陳情を原則受け付けないことだ。鳩山政権では、業界団体からの陳情は幹事長室が一元的に受け付けて各省庁の政務三役に伝達される。

「各省政策会議」での意見聴取と、幹事長室からの陳情の受付を踏まえて、政務三役は法案を取りまとめて内閣に提出する。内閣に提出された法案は、事務次官会議の代わりに、「閣僚委員会」で調整されて閣議に提出される。

このように鳩山政権では、法案が省庁で検討されて閣議に提案されるまで政務三役が主導する一方で、他の与党議員は「各省政策会議」に参加する以外政策過程に関与できない。この与党議員の活動制限が「小沢支配」と批判されている。

しかし、小沢氏の「国会制度改革」では、実際には与党議員には新たな役割が与えられているのである。

 与党議員の新たな役割とは、国会常任委員会での審議の活性化だ。

重要なのは、これまで国会会期中に週2回開催されていた委員会を、毎日開催できるようにすることだ。これで野党側に比べて制限されていた与党側の質問時間も十分に確保される。その上で、法案に対する「党議拘束」を委員会審議の段階では掛けず、審議が終了して採決を行う直前に掛ける。その結果、与党議員は委員会で法案の修正を行うことができる。自民党政権時に形骸化していた委員会審議が実質化されることになる。

常任委員会の委員長たちは、その役割の重要性に少しずつ気付き始めたようだ。

 来年度の通常国会について、川内博史衆院国土交通委員長が「すべての事業を委員会で論じたい」、鈴木宗男外務委員長が「核密約、沖縄密約、機密費、税の無駄遣い。国民が関心を持つテーマをやりたい」と語るなど、委員長たちは意欲を見せ始めている。

 日本の国会制度は、英国議会の「本会議中心主義」米国議会の「委員会中心主義」折衷型である。これは戦前、英国を参考に議院内閣制が導入され、本会議での論戦を通じて立法を行う「本会議中心主義」で国会が運営されたものが、敗戦後に米国の影響を受けて委員会中心主義に変わったためだ。


 この日本の国会制度は、まず議院内閣制により政府与党の政策立案を一元化させて首相の指導力を確保する。それに委員会中心主義を組み合わせることで、多くの与党議員が法案審議に参加できる。これは閣僚や野党の幹部クラスばかりが目立ち、その他の議員が活躍する場が少なくなる本会議中心主義の欠点を補うものだ。

 小沢氏の「国会制度改革」は、自民党政権下で政策立案が政府と党に二元化し、委員会審議が形骸化したために機能しなかった、日本の国会制度が本来持つ利点を発揮させるものである。