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宮田秀明『坂の上の雲』から学んだのは生き方の原点でした

 私の持論の1つに、「らしくない人が本物だ」というのがある。役人らしい人がいい仕事をしていることは少ない。一番教師らしい人がいい教師ではない。何か別の魅力を持っていて、その役職を超えた何か別のところからの生き方の原点をしっかり持っている方々が、その職業の中でも素晴らしい仕事をする人ではないかと思ってきた。秋山兄弟もそんな人ではないかと思う。

 中学生から大学生にかけて、たくさんの本を読んだ。長編小説ならドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』、マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』、国内なら島崎藤村『夜明け前』だ。まだ経験しえない人間社会の様々な複雑性を学んだと思う。人間ほど複雑な存在はないということを知るいい勉強だったかもしれない。

私の真面目に勉強しようという気持ちは『きけ わだつみのこえ』を読んで強くなった。こんなに平和で恵まれた環境におかれていることをもっと感謝しなければならないという気持ちだった。勉強できることは幸せなことだという気持ちが芽生えたのだ。

 本当に矛盾したことなのだが、私に影響を与えたもう1つの本が、福井静夫さんの『日本の軍艦 わが造艦技術の発達と艦艇の変遷』だった。旧日本海軍の艦艇技術史をまとめた本だった。軍艦はカッコよかったし、独創的な設計ということに強い興味を持った。

 それから数年後、大学生の時、実家に帰省して古い本を見つけた。昭和3年改造社から出版された「現代日本文学全集」第11篇の正岡子規だった。

 権威や世の中の評価を気にしない強さに驚いた。本当に正しいことは正々堂々と主張しなければならない。長いものに巻かれるような態度や言動はいけないということを教えられたような気がした。

 学生の読書量は年々低下している。文章力の低下でそれがよく分かる。

 文章力だけならまだいいのだが、人の生き方を知り、自分の人生の原点を獲得し、職業のベクトルを得て、創造への情熱を持つことのないまま社会に出ていくとしたら、あるいは不充分な人間の理解や、あいまいな原点や、その場主義的な職業選択や、創造の価値への無知をそのままにして世の荒波の中に出て行くとしたら、その損失は大きなものとなるだろう。

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