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焦点:生産減速は予想以上の見方、アジア需要が不安要因

生産の増勢が徐々に鈍化していることが6月鉱工業生産で鮮明となった。季節調整要因で統計上は減速が誇張されている面もあるが、生産は確実に減速感を強めている。背景には中国などアジア需要の停滞がありそうだ。
 先行きも円高の影響や政策による需要下支えの終了など、懸念材料も多い。企業サイドはアジアの成長期待感から年後半も強気の生産計画を維持できるとみているもようだが、市場関係者からは先行きを懸念する声が高まっている。

 日銀の試算でも、リーマンショック後の大幅な落ち込みを反映した季節調整の歪みにより、四半期の生産前期比は2%程度下押しされているという。統計上では1─3月の前期比7.0%上昇から4─6月に1.4%上昇、7─9月見通しは0.2%上昇へと増勢が大きく鈍化し、夏場は停滞感が漂う。しかし季節調整の歪みを調整した実勢では、昨年後半の5%台の上昇から、1─3月は4%程度、4─6月は3.4%程度、7─9月は2%上回る程度と、緩やかに減速する姿となる。

 日銀自身、生産は徐々に減速していくと見立てていたため、ほぼそうした姿が確認できたとみているもよう。問題は、減速の度合いが予想以上のものかと言う点だが、現時点では日銀内でもコンセンサスはできていないようだ。

 伊藤忠商事・主任研究員、丸山義正氏は、その背景として、世界的な在庫復元の終了と景気政策の効果一巡による輸出の減速、そして、中国経済のシフトダウンによる在庫調整、さらに中国での賃上げ交渉ストによる生産休止、といった複数の海外要因が影響しているとみている。

日銀が公表した6月実質輸出は09年2月以来の前月比減少に転じた。内閣府が公表している実質輸出ではアジア向け輸出数量が前月比0.3%増とほぼ横ばいにとどまった。鉱工業生産でも6月の鉄鋼の出荷はアジア向けに亜鉛めっき鋼板や普通鋼帯が減少、電子部品でも液晶素子や半導体集積回路なども減少している。リチウムイオン蓄電池も中国向けパソコンの需要悪化で在庫が積みがっている。

 中国が不動産投資の過熱抑制策を実施、鋼材需要や建設資材などの需給は悪化しており、その影響が日本にも波及してきた面がある。円高による日本企業の世界シェア低下という要因もありそうだ。

国内面では、9月でエコカー補助金制度が期限切れとなる自動車生産は年後半の国内向け販売に不安が漂う。また家電製品のエコポイントも年内で終了時期を迎え、耐久消費財落ち込みの影響がありそうだ。円高が続けば「輸出の増加テンポが鈍る可能性が高く、生産も徐々に足踏み状態に陥る」(農林中金総合研究所・主任研究員・南武志氏)との懸念もある。