<米国と日本には、非常に重要な違いがあると思います。その一部は構造的なものです。最近の日本経済の生産性は比較的低く、労働人口も減っています。そのため潜在成長率は米国より低く、この点で活気の乏しい経済です。日本は非常に長期にわたって銀行システムに問題を抱えており、何年もその解決を放置してきました。>
つまり、デフレを防ぐには金融を緩和すればよいが、日本の場合にそれが効かないのは構造的な問題によるものだ、というのがバーナンキ議長の一貫した見解である。
この見解は白川総裁とほとんど変わらない。白川総裁は、今年5月の講演をこう結んでいる。
<日本経済の直面する最も重要な課題は潜在成長率の趨勢的な低下であり、この問題に正面から取り組む必要があります。いわゆるデフレの問題も、成長期待の低下というわが国経済が抱える根源的な問題の表れだと思っています。>
つまりバーナンキ議長も白川総裁も、潜在成長率(長期的に維持できる成長率)の低下が日本経済の最大の問題であり、そういう構造問題を解決しない限り、中央銀行だけの力でデフレを解決することはできないと考えているのだ。
右の図のように2000年代前半、日銀が2002年にマネタリーベース(銀行への通貨供給)を40%近く増やしても、マネーストック(市中に出回る資金)はほとんど増えず、逆にマネタリーベースを減らしてもマネーストックは減らなかった。
日銀がいくら銀行に金を貸しても、銀行が企業に貸す金が増えない原因は簡単である。企業が金を借りないからだ。
最初のバーナンキ議長の答えを逆に言い換えれば、こういうことだ。 「日本がデフレから脱却するには、まず構造問題を解決する必要がある。生産性が高まって潜在成長率が上がり、経済に活気が出れば金融緩和も効くようになり、デフレは脱却できる」──。
バーナンキ議長も指摘しているように、日本の直面している問題は構造的であるとともに政治的である。抜本的な改革を先送りしているために非生産的な部門に労働人口が閉じ込められ、人的・物的資源の効率的な再配分を妨げているのだ。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100730#1280469344
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100727#1280199694
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080317#1205745844
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20091028#1256686732