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【転換への挑戦】元首相・中曽根康弘 「戦略的」はあるか

 日本はそもそも、伝統的に国家戦略に弱い国であるが、民主党政権はまさに外交戦略の主体性がないまま今日まできたといえよう。


 尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件をめぐる対応はその典型だ。平素の用意が十分できていなかったことで、早期果断な方針を鮮明に打ち出せず、あわてふためいていた。官邸や外務当局に抜かりがあったと批判されても仕方がない。ついでに言えば、海上保安庁の巡視船に衝突したとして逮捕した中国漁船船長の釈放は主として検察の判断に頼るものでもない。あくまで官邸が主導し、責任をもってやるべきであった。

 日米間は、太平洋を隔てての共通の価値観を持つ大国同士の運命的提携を有している。それが「日米同盟」という形で具現され、戦後一貫して揺るぎないものとなっていた。かたや日中間のそれは、アジアの隣国同士として、複雑に刻んできた過去の歴史と、良好に維持していくとする未来の発展に対する共通の運命的提携を意味する。


 日米中の3カ国は、アジアおよび世界的に重要な共同責任を分有する競争相手であり、協力し合う隣組でもある。ただ、日米と日中にはこうした背景の違いがあり、日中間では「戦略的」という表現で、非常に長期的ながらも流動的、弾力的な相互配慮をも抱えたものとなっている。


 となると「戦略的互恵関係」は、ときの政権がその都度構築していかなければならない。平和や友好協力関係の維持を踏まえながら、安全保障を含む政治や、経済、文化、相互交流などの国家戦略を描きゆく。そして、相手の政策展開を見つめながら、最後は外交で双方の立場や内容を詰め、最重点課題を選択していく作業が欠かせなくなる。当然ながら、国益や外交的主張に触れるものには、シビアな考慮が必要だ。

 では、日本側はどのように「戦略的」を描いていけばいいか。官邸内に有識者らによる「賢人会議」を作り、会議に検討させるのも一つの方法だろう。

 同時に、政治家は約2千年に及ぶ日中関係の歴史をよく勉強する必要がある。中国民族というものも勉強しなければならない。その上で、中国のトップと友情を分かち合うまでの関係をつくっていく。中国人は家庭的な付き合いを高く評価する。トップ同士に相互尊敬関係の真の友情が生まれれば、外相ら他の閣僚による話し合いもスムーズになっていく。日本の政治家はそういう「急所」をとらえて、中国と付き合わねばならない。