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【日本の未来を考える】東京大・大学院教授 伊藤元重 円高より深刻な国力低下

 さて、こうした長期的なトレンドで見ると、今の円レートはどのような位置にあるだろうか。円ドルレートで見ると、実は現在の水準は、実質で見てピークであった95年に比べて30%から40%も円安であるのだ。この15年の間に、米国の物価が日本の物価に比べて40%近く高くなったからだ。過去のピークに比べて相当な円安であるので、それほど大騒ぎをすることはないという説もある。


 ただ、産業界の実情などを聞いていると、そう楽観もできないようだ。どうも、ピークよりも実質で30%以上円安である今の為替レート水準でも本当に厳しいと感じている経済人が多いのだ。それだけこの15年間の間に、日本の産業の競争力や日本の経済力が落ちてしまったのだ。あるいはより正確な言い方をすれば、それだけ周辺国の競争力が高まったとも言える。円高を嘆くよりも、「この程度の」円高で経済が厳しくなるほど、日本の国力が落ちていることを嘆かなくてはならないのだ。